小説 運タマギルー 14

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じゃあ、しばらく獅子肉はお預けになっちまう。それはご勘弁だろう? ギルーよ。

話を聞くや否や、ギルーは困惑した表情を浮かべて困り果ててしまいます。

さあ、どうするのじゃ、どうするのじゃ? 困った困った!

何か一つでもよい。名案は無かろうか? のうたりんの頭脳をフル回転させますが、どうにもこうにも二進も三進もいきません。やれやれ、これではとうとう獅子肉のおあずけじゃなぁ……。そのときでした。

何やらおっかさんの表情に変化が見受けられますよ。

ん? どうしてにたりと笑っておるのじゃ? さては――?

そうなのです、全てはほら話だったのですよ。本当のところは野ネズミの肉どころか山猫までとらえておりましてね。この時代に英語は使わないのですが、ギルーは思わず、ハバ! ハバ! しましたよ。やれ、焼肉パーティーじゃ! パーティーじゃ!

「ほうれっ! 獅子かめぇ♪ カメカメ(食え食え)ギルーや♪」

思わず「シシカバブエ!」などと言った日本語でない雄たけびを上げそうになったのですが、いや、それは琉球語ではないし、おかしいだろう? と、ギルーは躊躇して見せましたよ。

ん? 何を言おうとした? ギルーよ? いってみんしゃい!

しし……、しし……、ししかむんっ(肉食う)!

今宵は愉快な晩餐でしたよ。おっかさんと一緒になってこんなに笑いながら夕食を共にするのは一体いつ振りだろうか? いや、もしかしたら初めてなのかもしれないのです。人間というものは腹がいっぱいになれば自然に笑顔になる物です。機嫌の悪いやつにほど飯をタンと食べさせた方がいいのかもしれませんねぇ。そうすれば日本おろか世界はもっともっと幸せかもしれません。機嫌のわるいやつというのは決まって不幸せな人間です。不幸だから機嫌が悪いのですよ。不幸ということは弱いということでして、やはり弱い人間には飯をタンと与えてやるべきなのかもしれませんね。三角ピラミッドで追い出し部屋というのはもう古い考えなのです。世の中というものは三角ではなくて四角出世で構わないのじゃないですか? ピラミッドだから強い弱いが出るのですよ。争いではなく共同体でなければなりません。さてさて、腹がいっぱいになったところでもう就寝ですよ。夜起きてもテレビも何もない時代ですからねぇ。相当、昔々の話なのでした。

悪いことが続くこともあれば良いことが連続で起こるというのも、世の中の流れのようなものでありましてね。ギルーの場合、満腹になった翌日にそれが起こりましたよ。さあ、大変なこった大変なこった! どうなる、ギルーよ。

「えー(おい)! 門番のギルーよ、師範から直々にはなしがあるそうだ」

はて? 何か悪さでもしたわけでもあるまいし。かといっても、毎日まいにちげんこつ見舞いして暴れておるのだけれども、まあ、それについては盗人どもに対してであって、一般人に限って手を上げるなんてことはしちゃいない。おいらだって農家の出だ。庶民の苦労はよく知っているだでな。手を上げるわけが無かろうもん。ぶつぶつ独り言をつぶやきながらお師匠さんの部屋へ向かいましたよ。

お師匠様! 番人のギルーです!

風通しを良くするため襖は開いていますよ。書斎の畳間にて書物を記しているのはお師匠さんです。彼はギルーへ顔を向けることなく”うむ、はいれ。”言いました。ギルーはなんだか分かりませんが只々申し訳なくて頭を掻きながら書斎へあがりこみます。

”正座で座れ。”注意を受けながら膝待付で座ります。

「門番のギルーよ、今のお手当は幾らだ?」

え? 給与の話か? 少しだけ安心しましたよ。へえ、三十文ですが? それがなにか関係あるんで?

少ないのう……。たしか母親の面倒を見ているとか?

いえ、めっそうもない! おいらが面倒見てもらっている始末でして。

暮らしはまともなのか?

なにがで?

普通にやって行けるだけの蓄えはあるのかと聞いておるのじゃよ。

ああ、そういうことですか。いや、あいかわらず貧乏暮らしでさ。生まれたころに比べりゃだいぶましにはなったんですがね。なにしろ京が閉国ときいてやす。まともではないですわ。

ふむふむ……。

「そろそろからてぃー(空手)も腕を上げただろう? それから学問。どうじゃ?」

「いえいえ、めっそうもありゃしません。まだまだ未熟者です」

「謙虚よのう……」

「あの……。それで、お手当は上がるんで?」

「うむ。それなのだがな。若頭になれば、のう……」

「番頭ですか? それなら任してください! 力比べならだれにも負けやしませんきに」

「力比べだけでは頭になれないのだぞ。上に立つには頭も必要なのじゃよ」

ちっ――! 思うけれども、今すぐにどうにかなることではありませんものね。ギルーは肩を落として一気に落胆してしまいましたよ。消沈というやつです。

おいらだってよぅ、学問頑張ってるんだぜ? そりゃあ一生懸命さ。だけどよう、頭の味噌が足らねえみたいで、どうにもなんねえ。右から流して左に出るならまだしも、右から流して右鼻から出ちまうんだもんなぁ。全く学問ってやつは厄介な代物だぜ。

「はっはっはっ! おい、ギルー! どうせお前ががんばったところで無駄無駄。そんなことより番人としての役割に精を出すこったぜ。なあに、年功序列でお手当は自然に上がるさ! 大丈夫、大丈夫」

門番の相方に相談したおいらが間違ってたぜ。くそっ……。おいらはな、どうしても上へあがりてえんだ。何が楽しくて門番でてめえ(自分)の人生終いにならなきゃなんねえんだ? おいらは役人になりてえんだ。そう、どうしても役人にならなきゃなんねえ。京へ行く夢だってあるさ! そりゃあ今すぐに飛んで行きてえよ。

「京へ行きたいだって? そんな無茶苦茶な! 泥棒にでもなるってのかい? それならいつでも京へいけるぞ。わっはっはっはっ! ギルーが盗賊だってよ! こいつはお似合いすぎていいってもんだぜ。わっはっはっ!」

盗賊だと――? 一瞬何かが閃きますが、それもつかの間。さっそく暗闇の中から獲物(忍者っぽい恰好で)たちが訪れますよ。こんやもひと暴れしてしまってストレス解消でしょうかねぇ? うっぷんを晴らすにはもってこいです。めでたし、めでたし。おや? まだ終わるわけにはいきませんでしたねぇ。これまた失礼いたしましたよ。

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