小説 運タマギルー 17

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したよ。

この子供はどうだ?

アンダクエーボージャーの表情を確認します。すると、奴は垢だらけの皮膚から満面の笑みを浮かべてこちらを見やった。それがなんだかおかしくて、ギルーはおもわず微笑する。

ふっふっふっ……。

決して大笑いなどするものか。懸命にこらえました。

だんなさま、どうしたんでげすか?

ふわっと歯垢のたまった歯茎の臭いにおいが鼻を突く。我慢できなかった。

わっはっはっ!

ギルーは大声を出して笑いましたよ。

いっひっひっ!

ボージャーもなんだかうれしくなったようで一緒に笑う。

わっはっはっはっ! うんうん、坊主、おぬしは面白い。愉快じゃな愉快じゃな。わっはっはっ!

それはそれは、どうもすみません! いっひっひっ!

ギルーはボージャーの肩をポンポンと軽く叩く。「さて、おっかあが待っている。共に帰るぞ、ボージャー」少しだけ士気を高鳴らせた表情へ切り替えると、ふたりは町はずれへ向けて歩き出したのでした。

「おい、ボージャー。そう言えば名前を聞いていなかったな?」

へ? わての名前でげすか?

そうだ。本当の名前は何という? まさかボージャーというわけではないだろう?

それが……。わては、わては……。

どうした? まさか自分の名前を知らんのか?

へ、へえ……、どういうわけだか……、どういうわけだかでげすね、どうもおかしなことに、あっしはあっしだけのことについて何にも思い出せないんでげす。

なんだと? 貴様、記憶喪失か?

きおくそうしつ?

その説明はなしだ。しかし、かわいそうに……。不幸が続いて脳天がやられちまってたんだな……。ほんとうになんてことだ……。

「あっしは”ボージャー”と呼ばれるのに馴染んでるんで」

「俺の事は知っているのか?」

「そりゃあもう、この町で知らないものなどいやしやせんよ、ギルーの旦那様!」

「旦那様は余計だ。これからは兄貴と呼べばいい。ボージャーと兄貴の関係だ」

「へぃぃぃ!」

今夜は肉鍋になると良いのだけどな……。ギルーは思います。けれどもおっかさんは年のせいで疲れているみたいだし、仕掛けを覗きに森へ入っては行かないだろう。

玉森を遠目で観やると、なんだかおっかさんの大声が聞こえてきそうな気がしましたよ。

おいっ! ギルーや! 今夜は肉鍋だぞ! はやくかえってきんしゃい!

「――此処がわしの家だ。はいれ」

「へぃぃ!」

しっかし、兄貴の家は藁ぶきでござんしたんで? おいらはてっきり瓦ぶき屋根想像しておりやしたよ。

言われて恥ずかしくなる。

これ! 余計なことを言うでない! これでも立派な家じゃてのう。

おっかさんが出てきましたよ。はて、貴様はどなたじゃ?

「へぃぃ! わてはボージャー言います! 兄貴の弟分でごわす!」

「はて? 町でなにかあったのか? ギルーよ?」

「説明は後じゃ。おっかあ、こいつに寝床と飯食わしてやってよいだろう?」

今日は獅子肉がないだけどなぁ、まあ、田舎汁がひとり分増えたところで餓死するほど困ってはいないきに。それにしても、ボージャー言うたか? 貴様、若いよのう? いくつじゃ?

「へぃぃ! 十つでございやす! 明日から畑仕事頑張りやすのでぇぇ!」

「ふぉっふぉっふぉっ! きさま、家なき子か。こいつはちょうど助かる。わしも年じゃけの。ギルー以外にも手伝いが欲しかったところじゃて。しかしまあ、良い拾いもんをしたものじゃな、ギルーよ」

「おっかあ、一つ宜しく頼む。わしは門番の仕事があるけんな」

「わかったよ。ほうれっ! ボージャーよ、田舎汁たべんさい。いっぱいあるけんね。おかわりしなさんな。たんとくいんさい」

へぃぃ! ありがとうごぜえやす。それじゃあ、おおきに――!

今夜の晩餐はとても愉快なものになりましたよ。久し振りに談笑で盛り上がりました。ボージャーの表情からも笑顔が絶え間なく見えます。よかったよかった。ほんとうによかった。

しかしそのときでしたよ。

ごほう! ごほう! ごほう!

非常に重たく辛そうな咳払いをおっかさんがしましてね、そりゃあ、もう、うっ血しているみたいだったものだから、偉い騒ぎになりました。

おっかあ!

おっかさま!

ギルーとボージャーはすぐさま駆け寄りまして、背中を摩りつつも横に倒して寝かせますが、それでも咳は収まりませんでしたよ。

ギルーの脳裏にあの夢がよみがえります。幻と空想の世界のあれですよ。

やはりおっかあは病気なのだな……。

死期はもう近いと感づきましたが、それでも力を振り絞ってその幻影を払しょくしようとします。幻は幻でしかない。そう信じたかったのですよ。

だけれども現実はこうしておっかさんの病死をたたりのようにして押し付けてくる。もはや、やりきれないくらいの、この上ない涙が涙腺から溢れてきました。

ぎ、ギルーよ。なぜ泣いて居る? わしゃあ、まだ死なんぞ! し、死んでたまるものか……。

おっかあ、もういいんだ。力を抜いて寝てておくんな。無理をすると咳も余計にひどく

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