小説 運タマギルー 26

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るだなんて。なんだか胸がきゅんとする。浩二君と言えば「またやってる! マジでウザいなあ……」と頭をポリポリとかいていた。けれどもわかる。彼もきっと、ベッキーと同じ気持ちなんだと。

淡いそうなキスが終わるのを待って、浩二君が車窓をノックした。電動のモーダーで鍵がカシャッと開く。後部のドアをひらいて車内へ。もう少しのんびり戻ってきてもよかったのに。向こうの母親が言う。これでも待ったほうなんだぜ。浩二君は返した。

翌日のイヴまで学校で、土曜日のクリスマスからは冬休みだ。頭の中で再確認する。その必要はない。けれどもおもう。まるで今夜がクリスマスイヴのようだったと。

もしかしたら、わたしって、イルミネーションの魔法によって浩二君に惚れてしまったのかもしれない。

それについては否定できない事でもある。

でもでも、ちょっとまって。タイミング的に今ではないの。そうよ、今夜、浩二君に告白されたら振るつもりでいたのだから。じゃあ、いつ頃がいいのかしら? それについてわたしが考える必要があるのかしらね? チャンチャラ可笑しくってよ。それじゃまるでジャンクハンバーグのケチャップじゃない。いいえ、それ以下のピンクソースね。でも、それじゃあピンクソースさんに失礼だもの。そうよ、サラダにだって合うし、何ならコニードックにもあいそうだわ。だってサンドウィッチに合うのだもの。ちょっとまって。わたしは一体、何を考えているのかしら? さっきからソースの事ばかりね。うふふ♪ だってそうでしょう? 浩二君たら、まるでおばきゅうのピンクソースなんですもの♪ 骨のない男ね♪ そんなことはないですって? じゃあどうして告白してくれなかったの? 何回でも何十回でも告白して挑戦すればいいじゃない。どうしてできなかったの? 彼は怖かったのよ。学君の存在が、こわかったの。只それだけの話だわ。

「じゃあ、明日の二学期終業式にな。おやすみ、ベッキー」

今夜は本当にこのまま終わってしまうのかしら? おもう。

浩二君がスチール製の上等な門扉をひらいてくれた。天辺は鋭く尖がり色は黒。ベッキーは見慣れているが、浩二君はあまり見かけたことがないだろう。彼は王子様ではなく一般的な家庭なのだから。

他人様に格差を見せつけたくはないと日々思っている彼女は、なんだか申し訳なく思う。そういえば学君の時も同じことを思ったのだっけ。

それじゃあ、おやすみなさい……。

ベッキーはなんだか歯切れ悪そうに力なくそうつぶやくと、玄関ポーチへ足を入れようとした。そのとき。

浩二君が背中を向けた彼女の肩をつかみ、状態を振り向かせた。力任せなソフトキスの瞬間だ。いま、ふたりは次元の異なる世界へ誘われている。はんなりと、ほんのりと。だが、とても温かい。

正直、こんなにも傲慢で強引な男流のエスコートは生まれて初めてだ。だからこそ心地よいと思ったし、その熱い魂の中へ身をゆだねたくなる。それが女性本能というやつだ。逞しい男の匂いに、男性フェロモンに、心から翻弄された。それは決して幻ではない。

だってそうでしょう? わたしはいま、こうして獣のオスと気持ちよさげに接吻を交わしているんですものね……。嗚呼、とても素敵よ……。

次の日のクリスマスイブ。学校で浩二君と言葉を交わすことはなかったけれど、心は今でも温い。火照っている。

何故、浩二君は突飛にキスをしたのかは果たして知らない。けれども、散らばった心を一つにしてくれたような気がして嬉しかった。

でも、きょうは一言でもよいから話をしたかったな……。

学校帰りに考えてみる。そもそも、なぜに会話を交わさなかったのだろう? この無意識に起こる拒絶反応の真意とは一体――。

学君。そうよ、学君がいるからだわ。それ以外に何があるっていうのかしら? けれどもちょっとまって。それじゃあ、わたしはどうしてキスを許したの? しかも長い時間しちゃって……。それは浩二君を受け入れたと言うしるしでもあるのではないの? そうでしょう? わたし。

いいえ、ちがうのよ。現実は異なるの。そうよ、きっとこれは夢なのだわ。ほんとうは、ほんとうのところは、学君と居たあの噴水広場から一時も経過してはいない。あの時気を失ったままこの世界へ誘われてしまったのよ。そう、全ては幻だったの。そうでしょう? マリヤ様。うそよっ! 幻だってお言いなさいな! さあ! さあ!

嗚呼、これは、あれは、現実の出来事だったのね……。ならばどうすれば良いっていうの? これじゃあんまりじゃない! なによ! マリヤ様だって人でなしじゃない! もうわかりました。もうしりません。

そうよ、学君とのことはおままごとみたいなものだったの。美談? 何とでもいうがいいわ。本当のところは、わたし、捨てられただけの話でしょう? 違うっていうのかしら? 只のお遊びよ。彼からしたらわたしなんてそこら辺のテーブルにあるティシュペーパーのようなものなの。鼻をかんでおしまい。只のやり捨てよ。それを美談で語るわたしはどうかしているのではないのかしら? いいえ、ちがう。美談にして傷を少しでも小さくしようと必死なのよ。そうでなければどうにかなっちゃうじゃない? 心が、精神が。

ジングルベルジングルベル。今夜一たび眠ってしまえばメリークリスマス。

その前に眠れるわけがあって? 自問してみる。

考えないようにしなければ。こころを無にするのよ。そうしてまぶたに力を入れることもなく、脳へ力を入れることもなく、深い眠りへと着くの。そうね、今夜の夢は何かしら? 何かこう特別なものをみたい。正夢というやつを、デジャブというやつを――。

――嗚呼、この世界はとても華やかね。そうでもない。実に殺風景だ。ねえ、どうして? どうしてわたしはこの森の中にいるの? ススキの葉がのびに伸びていて向こう側が見えやしない。確かに海があるはずよ。だってそのような香りがするのだものね。潮の匂いがするの。ほら、音だって聞こえる。かすかに、たしかに。さざ波の音がこちらまで届いている。さあ、道を開きましょう。でも、どうやって? 踏み倒すのよ。ススキ群をかき分けて踏み倒して前へ進むの。それってあたかも人生のようだわ。不思議なものね、こんなところで人生観を学だなんて。本当のところはそれどころではないでしょう? どうしてわたしはこんなに沈着冷静なのかしら? この世界が夢だから? いいえ、これは現実の世界でしょうね。だってこのような夢は生まれて初めての経験ですもの。五感で感じているのよ。なにもかもを。情景を。果たしてこの世界に明日だなんてあるのかしらね? なんだかもう二度とこの真昼間の世界から抜け出せないような気がするの。だってそうでし

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