小説 運タマギルー 1

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滝川寛之の無料連載小説

運玉ギルー

著者:滝川寛之

 

 

第一印象はあてにならない。確かそういう話を誰かから聞いたことがある。はて? それはどこでだっただろう? 昨日のトイレ回数と似ていて、なかなか思い出せない。ベッキーは、めぐる記憶に翻弄されながらも前を歩いていた。

この町は人口の頭数よりも圧倒的にサトウキビ畑が多い。けれども住宅密集地は当然あって、一軒の大型スーパー近郊に住む彼女は、なんだか直ぐ近くの緑林というものが遠い存在にあるような気がしてならなかった。

西原町には北南へ横に長い敷地を持つ製糖工場がある。そこから漂うべっとりとした甘さを感じる特徴的な香りはいつまでたっても慣れなかった。ケーキという肥料があるのだが、それと瓜二つというか全く同じだといっていい。そんなことはその肥料自体がサトウキビの粕で出来ているんですもの。当然ではないかしら? 誰かが発したその言葉は頭にこびりついてやまない。へえ、サトウキビの粕って黒砂糖の色をした肥料になるのね? そんなことを思いながら。

町のはずれには小さなパプテスト教会がある。ベッキーの家族は毎週日曜日にそこへ通っていた。教会というものは白いペンキ塗装が印象的で、十字架をてっぺんに掲げる三角屋根はたいていの場合、ファンデーション色のギリシャ瓦。

牧師のアンダーソンという日系人は、遠いハワイ諸島からの移住民で、”ハバ! ハバ!”というジョークをよくすることから察せる通り、とても陽気な大人。彼はケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダースのような白ひげを蓄えている。年は結構なものだ。

ベッキーはイギリスと日本人女性のハーフである。なのでアンダーソン牧師家族とは馬が合ったものだから教会は余計に楽しかった。しかしながら彼女は会話に英語を使うことを極力避けた。なぜなら学校では硬い硬い日本語を使うからだ。石ころみたいな文学を覚えるためには、日常なるたけ日本語に慣れておく必要があったのである。

でもパパは日本語がへたくそなの。だって働いているところが沖縄で一番すごい嘉手納基地なんだもん。友達もアメリカ人ばっかりだし。でもママはね、何でも話せるのよ♪ えへへ♪ すごいでしょう? だからベッキーはパパと話すときだけ英語を使うのよ♪

ベッキーの自慢はいつだってママ。

えっと……。ママはね、芸能人みたいにとってもとっても美人さんなの。誰に似ているかっていうと、中村アンていうモデルさんみたいな感じ。でもでも! 少しふっくらしている感じかしら? スリムよりもグラマーなの。やっぱりパパの食好みに合わせているせいかもしれない。ほら、アメリカ人に友達多いとアメリカ色になりがちじゃない? たっぷりチーズとサラミを乗せたピザだとか、ピクルスの効いたハンバーグだとか。でもでも! それっておいしくてやめられないのよね。わたしも大好き♪ うふふ♪

ベッキーには年の離れたお姉ちゃんがいる。四歳差だ。彼女はとてもお父さんに似ていてやや肥満児。フェイスは美顔なのだがふっくらしている。全体的に太っていなければ男児にもてたであろう残念な容姿をしていた。それをお姉ちゃん自身は一向に気にしていないみたいで、ベッキーはこれもそれもパパと似ているからかな? と勘ぐって何も言わなかった。

ママに似ているのは姉妹の中でもベッキーのほう。だけどもフェイスは中村アンが外人になったようなハーフ顔で、それはそれはママ以上に美顔の持ち主。体もほっそりしており、ヒップラインは幼少の頃より美しかった。それをお姉ちゃんはうらやましがらずに”もてる女は苦労するのよ。”と助言だけしていた。

今日があって明日があるように、明日があって今日がるようなものだ。確かにそうだろう。しかし、まだ幼少のベッキーにとってみれば、今日は今日で明日は明日なのである。それはお天道様が決めたことではない。彼女自身の判断。なものだから、彼女にとってみれば今日は今日の姿があり、明日は明日の姿。自身の容姿を気にすることなく、低学年では泥んこに砂遊びと言った男児顔負けの放課後あそびをよくした。

それも小学生高学年になるとすっぱり縁を切る。今度は貝殻で乳首を隠すビーナス像を意識したように、性別的な恥じらいを覚えはじめた。きっかけは醜いわき毛と恥毛が生えてきたことによる羞恥心。もう! どうしてこんなに香ばしくていやらしい汗のにおいがする毛が脇とあそこから生えてくるの? 憎たらしすぎる。自身の体が憎たらしいのだ。ベッキーからしてみれば体毛は鼻毛のそれと同じ扱いのようなもの。とにかく抜いてぬいてぬきまくってやるんだから! 毎晩、毎晩、彼女は小さいピンセットでわき毛と恥毛を抜いた。肌が赤くはれる。けれども構いやしなかった。痛さが快感だなんて嘘。その事については将来的にも否定するのだが、わたしはもしかしたらマゾヒストなのかもしれないなどと勘ぐりアナルを自身で責めたりもした。小学六年生がアナルに指を突っ込んでオナニーするのだ。このころから赤い血が臭う性の快楽に目覚めてゆく。わたしったら本当はいけない子なの。それがまた、たまらなく淫乱にしてゆく。嗚呼、マリヤ様。女の悦びをありがとうございます。

はじめてのオナニーは飴色のおしっこを我慢するところから入った。授業中トイレを我慢しているときに偶然発見した快楽。クリトリスが擦れて気持ちが良いの。だって、おしっこが出ないように股をぎゅっとして合わせているでしょう? 女はそれがたまらないものなのよ。それから放尿する。全てに解放されてでるおしっこは、まるで潮を吹いたかのような赤面色。

沖縄の空はとてもよく透き通っており青色だ。時折流れてくる千切れ雲がチェリーブロッサムのサクランボのように、丁度良くアクセントになっていてたまらなかった。

公園の芝生に寝っころがって緑の匂いと滴の冷たさと枯葉の匂いを嗅ぎながら見上げる大空はとにかくサービス旺盛にこちらへ立派に見せつけてくれた。それにこたえるようにしてワー! 大声を出す。嬉しい方の”ワー!”だ。怒りの、悲しみの、叫び声ではない。

「ねえ、お姉ちゃん。中学校は楽しかった?」

「ええ。もう来年は高校生になるけれど、中学校にはいい思い出がたくさんあったわ」

「中学校かぁ……。来年楽しみだなぁ♪」

「ベッキーも楽しめるわよ。きっと。うん、きっとそうよ」

この敷地には色んな遊具がある。ステンレス製の流しそうめんのような滑り台に、海上へぽっかりと浮いていそうな大きなボールでできたぶらんこ。鉄パイプ製の懸垂台。一枚板であろうシーソーに、大型トラックのタイヤでできた跳び箱まである。それらのうち姉

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