小説 運タマギルー 30

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はて? 入り口は何処だろうか? 出口は何処だろうか?

考えてみるけれども、まるで見当がつかない。頭を抱え込む。脳内は非常に掻き乱れていた。

はあはあはあ……。

動悸が荒くなる。苦しい、とても苦しいのだ。

わたし、わたしは……。

いけない、自身の姓名すら忘れてしまいそうなほど動転しかけている。

しっかりしなきゃ、わたし……。だけれども、どうせならすべてをなくしてしまっても良いじゃない。そうすれば、こんなに考えなくてすむものね。こんなに苦しまずに済むものね。ちがうでしょう? そうじゃないでしょう? わたし。

いま、心地よいのは風当りだけ。乾いた空気がひんやりとしていて、この芋拾いで疲れた身体にとても優しく感じる。匂いと言えば緑が掛かっていて、それでいて新鮮な水の、飲みたての水の感覚がした。靡いている森のガジュマルの枝は影と陽光とで濃いコントラストのように見えた。

わたしはこれからどうなってゆくのだろうか? 自問してみると、なんてことないじゃない。只流れてゆけばいいだけのはなしよ。と、中枢神経から開き直りの言葉がそっとささやいてきた。

「おーい! アンダーよ! 戻ってこんかい! 話は終わったでなぁ!」

そうだった。これからわたしは裸となりて彼らの背中を流すのだっけ……。でも、そんな事、生れてはじめてなものだから、それ以上の計算的な想像などできっこない。やはり、只、流れに任せるしかできないのね。わたし……。

「――えぇ! ほんとうでげすか? そいつはありがてえや! それで、あにき? 何か企んでるんでござんしょう? 何でもゆって下せえ! あっしは何でもしますきに!」

それは今宵のはなしでございます。

夜空はすっかり暗くなっておりまして、その代わりとして無数の星々が望めましたよ。

「――そいじゃあ、行ってくるけんのう。家の番は任せたぞ」

おなごの裸ですっかりご機嫌なアンダーを外で待たしておいて、ギルーはベッキーに言いましたよ。

「はい、おきをつけて……」

何だか今夜は不思議なもので、なんとなく最後のような気がしておりました。人生の最期を感じたのです。正直こわかったといえばそこまで。しかしながら、そんな女々しいようではワシもまだまだじゃな。と、ほっぺを叩いて士気を高めましたよ。

今宵のお初仕事の手筈はこうです。問屋の門番と喧嘩をし、守衛全員を引き寄せてから、アンダーがひょっこりと屋敷奥の倉を覗きに行くと言うもの。勿論、がっしりとしたぶっとい錠で閉ざされているでしょうから、中を覗くのは困難です。しかしながら、作戦はその錠の出来具合の確認だけ。だったのでしたから、それでいいんですよ。つまりは、金目のものがあればあるほど上等な錠で閉ざされていると言うものでしょう? ギルーは銭金をせしめているのかどうかさえ知れればよかったのです。盗みは後日、さらに作戦を練ることとしておきましたよ。

屋敷(問屋)といえば、ギルーの職場でもあります。しかしながら、門番の棟梁であるギルーでさえ、これ以上、立ち入ることのできないラインというものがありましてね。奥屋敷の事は全く知りませんでした。未知の領域なのです。

当然ながら、そこに銭金をせしめている倉があるということも、想像の中での代物です。本当のところは秘密の金庫倉などないかもしれない。無いでほしいと願いました。お世話になった屋敷ですよ。それはもう善良なる当主であってほしかったのです。

「おい!」

と言いましても、ギルーは非番とはいえ立派な棟梁です。そりゃあ、棟梁! どうしたんですか? しかしお疲れ様です! 等と返されるに決まってます。

あ、ああ、ま、まあ、なんだ、ちょっと夜の見回りをな。この辺も最近、物騒だときくからのう。

ポリポリと頭を掻くギルー。どうにもこうにも、騒ぎを起こしようにも慕ってくるものばかりでどうにもなりません。彼は仕方なく作戦を変えることにして座談会でもしようかと、そう考えましたよ。しかしそのときです。

ガラガラガラ――!

奥の方から大きな音がこちらまで響きました。おそらくアンダーがしくじってしまって、外壁へ持たせている桶群などに自ずから飛び込んでしまったのでしょうな。若しくは引っかかってしまったのでしょう。ギルーはおもわず頭を抱えましたよ。やはりつかえんやつじゃなぁ、アンダーよ。そう心の中で舌打ちしてです。

「盗人だー! 盗人をとらえたぞ!」

やれやれ、ギルーは助けに行かねばならないところですが、しかし、どうやって助けろと言うのでしょうか? 共謀罪で捕まっちまえば、ギルーとて真玉橋で処刑されてしまいますよ。さあ、どうする、どうする?

「おい! 盗人とやらをこっちへ連れてこんかい!」

へい! 棟梁!

連れてきますと、やっぱりアンダーでございますよ。数発殴られたであろう顔面はパンダ状態で目の周りは青たんになっておりました。前歯のほうもすっかりやられてしまったようです。

は、はにきぃー(あ、あにきぃー)!

おいおい、この程度の小僧を袋叩きにするとはお前らも人情ってものがないのう。ちょいとビンタをはって縄にするだけでいいじゃろうが! 空手の精神とやらは何処へ行ったのじゃ!

し、しかし、棟梁! 相手は盗人ですぞ?

盗人も何も、こいつはわしの知り合いじゃ。離してやらんか!

し、しかし!

そのときでした。騒ぎで起きた当主がこちらへ出てきましたよ。

「ギルーよ! きさま裏切り者か?」

「これは旦那、ちがいやす。只、こやつはわしの知り合いで――」

「黙らんか、ギルーよ。知り合いも何も貴様らは共謀じゃろうて。これはこれは無い頭を一生懸命に使ったものじゃな。おまえら! ギルーも力ずくでひっとらえろ!」

さあさあ、これからひともんちゃく起こりますよ。門番を含む用心棒たちは三十人ばか

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