小説 運タマギルー 36

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滝川寛之の無料連載小説

朦朧とした意識の中、彼女は震えた両手で必死に手探る。靄のようなものが邪魔だ。かき分けてかき分けて姿をみようとするものの、触れようとするものの、あろうことか感触は伝わらず、どうにもならない。ベッキーは泣いた。悔しくて悲しくて涙が止まらない。ご主人様はここにはいない。頭のてっぺんをハンマーでかち割ったようにして意識が重くなった。

嗚呼……。嗚呼……。

彼女は発狂しだす。

きえぇぇ! きえぇぇ! きえぇぇ――!

脳が締め付けられて、血管は吹き出し、眼からも鮮血が流れた。やがてベッキーの脳は破裂する。粉々になって死に絶えるのだ。

ベッキーは夢の中で夢を見た。幻影がうっすらと霧にかかっている。彼女はハッとして頭部を手でもって確認した。ある。たしかに。しかしながら頭髪がすべて抜け落ちたようにして無いではないか。それからこの世界は、先ほどの幻と異なり寒かった。凍えるように寒い。浴衣はつけていない。消えてなくなってしまっている。

”おっ♪ 俺たち少年探偵団――♪” ”おっ♪ 俺たち少年探偵団――♪”

突然、けったいなコーラスがこだま含みに響きだした。

なんのことだろうか? 何のためだろうか? それから、この少年たちであろう声の主たちはいったい、誰……?

聞き覚えのない少年たちのこだま声に困惑するも、ベッキーはとにかくそんなことよりも今の姿を誰にも見せてはいけないと察知し、身を隠すススキ群を求めた。だがしかし、どこにもない。あたりは濃霧が漂っているだけで、皆無に等しかった。

”ベッキーよ……。やれ、ベッキーや……。”

そのご主人様の声に反応した心理状態は当然、yesだ。しかし、彼女は声を荒たげて、noと叫んだ。それは女性としての本能である。美を意識した人間だからこそのものである。

もっともっとちゃんとした状態で再会を果たしたかったわ、ご主人様。ごめんなさい、ご主人様。今は会いたくないの。だってそうでしょう? わたしはこんなにも狂ってしまって、目からも、耳からも、鼻からも、口からも、膣からも、血を流している。一体どういうことなのかしら? しまいには頭髪まで消え失せてしまって。ほんとうのところは眉毛だって消えてなくなってしまっているのよ。これじゃ、あんまりでしょう? ご主人様……。

天を仰いでみる。しごく、ずだんだ雲模様(滝川寛之による新語:愚図つくという意味に近いがそれ以上にひどく曇っている様子)だ。その酷い有様に思わず涙が止まる。止まらなかった。

だからなに――?

だからと言って私の代弁者になろうはずがないじゃない。この雲景色は泣いているのよ。ほうらみなさいな、いまにも涙が落ちてきそう。それとも大粒の雹かしら? 降ってしまいなさいな。とことん降ってしまって私をおぼれさせて。勢いよく降りしきってずぶ濡れにして。

嗚呼、こんなことってあるのかしらね。わたし、本当のところはシンデレラ姫ではないのよ。これはれっきとした人魚姫なのだわ。そう、わたしは、わたしは、これより銛で突かれて標本にされてしまうジュゴンなのよ。でも、どうして! どうしてなの? そんなの絶対に嫌よ! わたしにだって権利はあるはずよ。ええ、そうよ、生きる権利というものがあるの。ねえ、ご主人様。いっしょに行きませんか? 現実にあるもう一つの世界へ。その森で新しく生活を共にしてゆきましょう。

「ベッキーよ、なあ、ベッキー。ワシはもう駄目じゃ。あの日倒れた後、追手どもがワシの首をぎっちょんしてのう。アンダーと共にさらし首よ。まったくなさけん限りじゃて。ワシは今、どうして話してると思う? 知りたいか? ベッキーよ」

どこ? どこなの? ご主人様。わたしにはあなたの姿が見えないのです。嗚呼、まったくなんてことなの? なんてことなの!

「お前にワシは見えん。とうぜんじゃろうて。ワシはな、ワシはお前の体内から語り掛けておるのじゃ。なあ、ベッキーよ」

体内ですって? それじゃあ、あの幻影はなんだっていうの? 濃霧にうっすら浮かぶあの影は……。まさか、死神? えっ! それって嘘でしょう? ちがう。あれはたしかにご主人様の影のはずよ。でも、どうして? どうしてご主人様はわたしの体内から語り掛けていると話すのかしら? それっておかしいじゃない。わたしは影のほうから聞こえてるの。こうしている間にも影はどんどん近づいてて、もう少しで姿が見えそうなのに。いったいどういうことなの? ねえ、ご主人様。ご主人様!

「あの影はこれからお前が世話になる主じゃて。お前は囲われるのじゃよ」

囲われる? 一体どういうことかしら? まったく見当もつかないじゃない。ねえ、どういうことなのかはっきりおっしゃいなさいな。

「まもなくじゃな、まもなくお前は少年探偵団に遭遇する。それが運命じゃてのう」

「少年探偵団とは? 集団のサークル名か何かですか?」

「はて、サークルとは何ぞや? 組のことか? そのようなことなのか?」

「班です。組よりももっと小さな組織。その班がわたしと関係してくるなんて。もうわたし、意味が滅茶苦茶で狂ってしまいそう。でも、もうすでにおかしくなってしまったのですね。ご主人様、そうでしょう?」

「そ奴らは味方じゃて、なんも心配なんぞ要らんぞ」

わたしは助かるのですか? 訊こうとしてやめた。そうじゃない、思う。

だって、わたしが助かったとしてもご主人さまは救えないんですもの。こんな運命のいたずらなんてあるのかしら? わたしはご主人様と一緒になりたい。一緒でいたい。それはつまりわたしもこのまま死んでしまえばいいってことなのよ。そうでしょう? ご主人様。でもご主人様は、わたしは救われるという。これってあんまりよね。

たちまちめまいがする。頭がひどく重かった。

嗚呼、わたしはもう戻らなくちゃ。現実の世界へ。あの井戸端へ。さあ、ご主人様。一緒に帰りましょう。あなたはわたしの体内にいる。つまりは一緒に現実に戻れるということじゃない。わたしはわたしが心配するほど物事は窮地ではないのかもしれない。そうでしょう?

あたりがモザイク調に分子化する。そいつが雷の光とともに大きくはじかれた。上のほうから、下のほうから、順番に崩れ去ってゆく。いったいどこへ消え失せるというのだろうか? 答えは明白。

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