小説 運タマギルー 24

連載小説
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滝川寛之の無料連載小説

クリスマスが近いと言うのに、みぞれや小雪どころか、去年に増して温かく感じる。年々思うことだけれども、温暖化現象というやつは相当深刻になりつつあるようで、本当に地球は大丈夫なのだろうか? などと同級生の話題種になるほど大人の問題は学生にまで懸念材料として影響しだしていた。

日曜日の教会では、クリスマスまでの礼拝分となる数だけビニルパイプほど太い真紅のキャンドルが棚へ一列に固定されており、マッチでもって明かりをともされている。大よそクリスマスを連想させるには十分なのだが、それに足されてクリスマスリーフや装飾をなされたツリーらが辺りを更に彩っており、そのなかで歌う賛美歌は何だか心地よかった。

ことしも教会でクリスマスを過ごすのね。でもそれってとても素敵な事じゃない。わたしったらいつのまにか男女交際に興味が無くなっちゃったみたいにして心がしぼんでしまったけれど、でも、それによって学君への気持ちは本物だったんだってことが良く解るの。だってそうでしょう? わたしは今でも彼のことを色濃く感じているのだから。

思い出してもしょうがないじゃない。静かに心の片隅にしまってあるはずの恋が、キリストの誕生祭によって、冬の寒さによる人恋しさによって、またしても引き出しの中から飛び出してしまう。そんな夜は就寝前に人知れず泣いた。枕が水バケツの中へ入ったようにしてんびしょびしょになろうとも構いやしない。只々、泣き崩れるのだ。

顔を押し付けて大声を出してみると、なんだかすっきりとした。しなかった。だけれども、今夜のところは泣き止みなさいと聖母マリヤ様は労わってくれる。慰めてくれる。それから夢の世界へ誘われるのだ。混沌とした幻の世界を、ベッキーはめくるめく観た。幻影とは夢舞台。その世界で彼女はミュージカルを演舞するのだ。

嗚呼――♪ かなしいのよ――♪ ”なにが?”

これっていけないことね――♪ ”どうして!”

だってだって♪ わたしは一人ではないのだものね――♪ ”ひとりでしょう?”

”森の中からオオカミよ――♪ ジャンクジャンク……♪”

ハンバーグはこりごりなの――♪ だってわたしは女の子だものね――♪ ”ハンバーグデブ!”

だけどだけども♪ それもわるくはなくてよ♪ わたしは落ちたリンゴ姫♪ 赤く実った果実なの♪ あのニュートンも言ったわ♪ そうして食らいついたのよ♪

”ジャンクジャンクジャンク……♪”

そうね、あなたはそれでも襲い掛かろうとしている♪

わたしは――♪ わたしは――♪

ジャンクハンバーグの生贄になるのね――♪ 嗚呼――♪

”ジャンクジャンクジャンク……♪”

置いてけぼりなんていけないわ♪ さあ、わたしの裸体を食べてちょうだい♪

お食べな――さ――い――な――♪

”ぱっくん♪ ぱっくんちょ♪”

ハラハラとした此処は何処なの――♪ 星々がきれいだわ――♪

こうしてわたしはあなたと手をつないでいたのね――♪

せせら――♪ せら――♪

”貴女は学君がいつまでも好きなの♪”

嗚呼! そうよ――♪ わたしは自惚れてなんかいないわ――♪

只々欲しくってたまらないだけなの――♪ そうよ――♪

ジャンクだってアメリカンホットパイだってなんでもごちゃ混ぜにするがいいわ――♪ 嗚呼……♪ 嗚呼――♪

夢から覚める。時刻は朝焼けの眩しい七時頃。冬なので日の出が夏よりも遅い。それにしても楽しい夢。おもう。

寝間着のまま寝室を出て、キッチンにある大型冷蔵庫の扉を開く。成分無調整の生乳があるので、コップへ注ぐこともせずにラッパで一気飲みした。

母親は朝食の支度を済ませており、ダイニングテーブルの椅子に腰かけて、テレビから流れているモーニングショー(朝の報道番組)に食い入っている。父親はもうすでに出勤を済ませていなかった。

「まだ寝間着なの? 早く支度しないと、いくら高校が近いからって遅刻しちゃうわよ? それとも、ちゃんとわたしが起こせばよかったのかしら?」

「今日は朝食たべないで学校へ行くからだいじょうぶ。それに自転車だし全然間に合うから」

「そう、それならよかった。けれど、明日からはちゃんと起こすわね。だって、高校生に朝食は大事でしょう? 本当に取らなくて大丈夫なの?」

うん。それじゃ、顔洗って着替えたら出るね。

自転車気を付けてね。

うん、わかってる。

それと、貴女ももう高校生なのだし、お母さんがいちいち言うのもなんだけれども。まだあの男の子のことが忘れられずにいるのね?

どうしてその話するの?

ごめんなさい。朝起こそうとした時に、枕がぐっしょり濡れているのに気が付いたものだから……。それで今朝はちゃんと起こさずにそっとしていたのよ。

お母さん、気を遣いすぎっ――!

号泣していたことを感づかれていたことが恥ずかしかったわけではない。恥ずかしいと思うことこそが恥ずかしかった。わたしもまだまだ子供なのね。落胆する。しかし、それでいいじゃないと開き直ってみた。土地が土地柄、ホワイトクリスマスなんぞと無縁ではあるけれども、でも、クリスマスはクリスマスですものね。明るく振舞わなければ。そう奮い立たせた。

今日と明日が終われば、土曜の朝からメリークリスマス。

前の週に行こうと誘われていたイルミネーションは、結局のところ、今夜行くことになった。

イヴイヴの日にいくだなんて、まるで交際しているかのようだわ。浩二君たら、やっぱりわたしに脈ありなのね。うふふ♪ でも、そう簡単には行かなくってよ♪

「”――あのう、こんばんは。ベッキーさんの同級生ですが、ベッキーさんいますか? あ! 浩二って言います。今夜、イルミネーションの約束しているやつです。”」

今夜の事だ。浩二君はベッキーの家まで親を同伴し、迎えにきていた。彼のお父さんの自家用車で目的地へ行く予定である。時間通りにやってきた浩二君には”さすがね”とも感

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