小説 愛するということ 44

連載小説
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「何もしてないんですか?」

「はい、おかしな人ですよ。工事関係者でもなければ海目的でもない。いや、定年で此処に来たって言うなら分かるけど、そうじゃないんですよ。年が三十後半で隠居には早すぎるし。何処か具合が悪くてと言う訳でもないらしいんです」

恵は、実おじさんがその人と親密な関係ではなく、また、決して良いほうには思っていない事に気付いた。が、今その事に触れてはいけない様な気がし、それに関してこの場で横から訊く事を止めた。実が恵の目を見た。

「まあ、とにかく余り関りは持たない方が良い。あの人は気味が悪いからね」

「はい」

やっぱりと思いながら恵は返事をした。

「ただいまー」

玄関から声が届いた。実の妻である恵美だ。

「おい、馬鹿! 園長先生と恵ちゃんもう着ちょんど(※着てるぞ)! 何処に行ってたば(※行ってたんだ)?」

「あいやー(※嘘でしょ! )! 本当にね? あいや、まだ化粧して無いさ。あらー! 園長先生、恵ちゃん、お久しぶりです! もう、化粧して無いから恥ずかしいさ」

恵美も実同様に一度児童相談所で恵は会った事があった。背が低く痩せ型だが、強い日差しで腕と顔が濃く焼けていて、南国の逞しさを感じさせる様な女性。

「馬鹿! 化粧はどうでもいい! ハッシャビヨーナ(※なんだかな)、まったく」

「馬鹿馬鹿うるさいね! あんたもフラー(※馬鹿)でしょ。ねえ、恵ちゃん」

「言われて見ればそうだけど、だけどお前には言われたくないさー」

「だけど、こんなに早く来るとは思わなかったさー。今、蟹網仕掛け見に行ってた訳さ」

「こんな時に蟹網仕掛け見に行くな! 園長先生、もうね、ほんとに呑気な奴なんですよ」

実は苦笑いでそう言ってから「本当に、頼むね」と冗談気味に恵美へと実は発した。家中、笑いで溢れた。本当に南国の島人らしいとても陽気な夫婦。

 

「定期的に様子を見に来るから。とにかく体には気をつけるように」

小型船と陸とを繋ぐ細い板で簡単に出来たタラップの前で園長は言った。

「はい。園長先生も御元気で」

「金城さん、それではよろしくお願いします」

「はい、安心してお帰り下さい。来月またお待ちしてます」

実は言った。園長は恵が果たして島に馴染めたのかどうかを直接伺う為に、来月またこの島へ来ることになっていた。

「それでは――」

園長は被っていた黒い帽子を取り恵と実二人へ軽くお辞儀をして船へと乗り込もうとした。そのときだ。

「園長先生!」

恵が呼び止める。

「何かな?」

園長が振り向き訊いた。

「あの、こんな時になんですけど、私や周りに居た人達を、その人達を、神様は知っていますか?」

園長はあまりの唐突さに正直困惑した。しかし考えてから冷静に恵へ言葉を返した。

「勿論だよ。人が神を愛するなら、その人は神に知られています」

「それじゃ、二つの世界が一つに見えた瞬間、その人は報われますか?」

「どういう意味かな?」

園長は首を傾げるようにして訊いた。

「二つを見たんです」

「二つを見た?」

「あの、私じゃなくて……。彼は、彼は向こうの世界に移るって話してて、どうやってかはまだ分からないけど、将来、この二つの世界は光の力で一つになるって信じてるんです。だから心配で……」

言って、恵は涙目になった。

「そうか……。良くは分からないが、人によってはそれもあるかもしれないね」

園長は、ほんの少しばかり間を空けてから言葉を続けた。

「恵君、答えの先にはどんな形であれ必ず報いという物があります。大丈夫、君が思ってる以上に悪い方向へと気持ちを運ぶ必要はありません」

「そうですか。良かった……」

恵は両手を胸に当てて目をそっと閉じた。すると、一滴の涙が自然とこぼれた。それを見ていた園長は悟った様に言葉を発した。

「正樹君の事が心配かね?」

「え? どうして彼が正樹だって分かったんですか?」

「私も伊達に園の長を務めているわけじゃない。何十以上の園児や職員、その他諸々とあって、どうしても全てに対して事細かくとまでは行かないが、君達の関係だってちゃんと私の耳には届いています」

園長は恵の両肩にゆっくりと優しく手をやり、言った。

「世の中は全て祈りから現実となります。だから大丈夫。君はまたいつか彼に会える」

「はい」

恵は涙目に微笑み園長の顔を見つめ返事をした。

 

 

この島に着てから二週間。生活は開放的でとても良かった。里親制度に頼るほどに、この島に子供の数はとても少ない。恵が通う事になった学校は小中学校と一つに統合されていたが、それでも生徒の数は両指で数えるほどしかおらず、その頭は上級生に三人と下級生に五人で、同級生は恵ともう一人の女子しか居なかった。

恵は全ての生徒と直に馴染めた。実おじさんの言うとおり、此処では皆が一つ会話を交わせば家族のように親しんでくれた。

手入れが行き届いていない学校グラウンド端にある塩害で大きく口を開いたフェンスの直側は、白浜がずっと向こうまで続く海岸。放課後の下級生の遊びと言えば、必ずと言っ

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