小説 愛するということ 43

連載小説
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同じ位に低く、顔は丸顔でやや肥満体型といった具合。金城実は園長から目を逸らし、今度は側に立つ恵の顔を見た。

「やあ、恵ちゃん。元気だったかい?」

二人は児童相談所の一室で事前に一度だけ顔を合わしており面識があった。

「こんにちは」

「ここまで結構遠くて草臥れたろ?」

「はい。でも、飛行機からも、乗り換えた船からも、綺麗な海が見れたから全然大丈夫です」

「そうか、それは良かった」

そう発してから実は再び園長へ顔を戻した。

「向こうに借りて来た車を置いてます。それじゃ、行きましょうか」

「はい、よろしくお願いします」

三人を乗せた車は、船着場から反対側に位置する『仲浜』と呼ばれる浜辺付近へ向けて走った。船着場から直、島のちょうど真ん中を北から南へと通った一本道と左右に見える島を囲う様にして繋ぐ道とがぶつかる小さな三叉路があり、車はその内の森を越えて反対の海へと出る真ん中の道を選んで通った。途中、森の頂上辺りと言える高台に建つ灯台が目に入った。

「鳩間灯台だよ」

「森の中にある灯台なんて、珍しいですね」

恵が言った。

「この島は周りが砂浜に囲まれていて低いからね。見晴しの良い高台と言えば、この辺り位なんだ。島自体小さいしね。それで此処に建ってるんだよ。ここなら島の沖の何処からでも見える」

恵は思わず「凄い」と一言漏らした。

車は島に一つしかない静かな森を越え、やがては反対側の渚へ辿り着こうとしていた。まっすぐに伸びた緩い下りから見える道端の林の間となる中央に、とても青い海が望め始めた。恵は今日、これで何度目だろうか? ここでも「綺麗」と思わず口に出した。それ位に、ここの自然は何もかもが新鮮。

車はようやく砂利が敷かれた駐車場に到着した。直そばの赤瓦屋根の家の軒には、ヤギと牛が兼用して飼われている小屋があり、その為か、少しばかり畜産の香りが此処には漂っていた。

「中へどうぞ」

金城実が案内した。恵と園長は家の中へと入った。

「ただいま。おーい、迎え行ってきたぞ」

実は奥の方から聞こえてくるはずの声が聞こえてこない様子に首を傾げた。

「あれ? 恵美の奴、何処行ったのかな? ちょっと、コチラで座って待っててください。今、冷たい麦茶出しますので」

恵は居間の畳上に園長と座ってからあたりを見渡した。純和風でかなりの古さを感じさせる内装だが、洋風とも言える綺麗な家に住んでいた恵にとって、それはとても新鮮に感じた。ふと、台所らしき場所へと目をやると、そこから実がトレイに麦茶と純氷の入った透明のコップを載せてこちらへ戻ってくるのが見えた。

実は戻ってくるなり、すぐさま麦茶を氷の入ったコップへと注いだ。

「どうぞ、園長先生。恵ちゃんも、はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

「いやー、今日は本当に暑いですね。いやね、此処最近雨も嵐も来ないもんだから、土から干からびちゃってて、もうこんな感じでこの島は毎日カラカラ陽気なんですよ。いやー、暑い暑い」

実は扇風機の風を最大にして園長と恵の方へと向けた。

「いや、今さら言うのもなんですが、特に作間先生達の住む本島と比べると、此処は更に南にあるわけだから、そりゃ体感的にとても暑いですよね。そういう意味でも、彼女は此処に慣れるまで本当に大変かもしれません」

「煩い所から静かな所への環境の変化には、人は直に馴染みます。心配はありませんよ。暑さも直目の前の綺麗な海がいつでも癒してくれます」

園長は恵を見つめてそう言った。

「恵ちゃん。今日からおじさんと君は『里親』と言っても親子だ。だから、都合の悪い事や、とにかく何でも良い。隠さずにおじさんに相談してよ」

金城実は、児童相談所で面会した時からとても優しそうなオーラを発した人物。恵は健二の話から考えていた島のイメージとは全く違う現実に、ホッとした安心感を抱いた。

「はい」

恵は嬉しそうな笑顔で実にそう返した。

 

「恵ちゃんの部屋はここだよ」

実が恵の荷物を家の南に面した角部屋へ置いた。

「ありがとうございます」

「後からの話なんだけど、少し休憩してから一緒に周り近所へ挨拶しに行こうね」

「はい、分かりました」

「それと、これからは家族なんだから、もう敬語で話すなんて事、しなくて良いよ」

実は部屋の窓を一杯に開けてから話を続けた。

「この島はね、特に敬語なんか要らない所だ。島の皆が友であり家族みたいなもんなんだよ。最初は戸惑いもあるかもしれないけど、山岸さんの様に、時期にすぐ馴染めるさ」

「山岸さん?」

部屋まで後から付いて来ていた園長が訊いた。

「はい。ちょうど三年前に東京から移住してきた人が居るんですが。すぐ隣の向こうに住んでるんですけどね」

「へえ、東京からですか?」

「はい。まあ本土からの滞在は、決まって大掛かりな工事とかダイビング目的の夏場だけってのが普通なんですけど。ほら、此処は海以外何にも無い所でしょ? だから足を延ばすにしても、後々物足りなくなって皆帰って行っちゃうんですよ。工事関係者だって、一ヶ月に一回はかみさんに会いに戻ったりします。だけど山岸さんだけは、もう三年もこの島にじっと隠れるようにして住んでる。此処で何かしてる訳でもないのに」

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