小説 愛するということ 32

連載小説
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なは、君に優しくしてくれていると聞いている。此処でまた新しく色々とね、とにかくそろそろ学校の同級生とも早く馴染んで、向こうと同じ様に青春を楽しめば良い。それに、向こうの友達にだってもう会えない訳じゃない。何時だって会える。友達を失ったと思っていたら大間違いだよ。君は特別に普通の人以上に友達が増えてるんだ。だから何も落ち込んで両親にあたる事なんか無い。そうだろ?」

智彦の父親は、正樹がどうやってここに居るのかを当然知るはずがない。多分、親子喧嘩でもして此処に来たのだろうと智彦の父は勘違いしていた。

「もう良いじゃない。ほら、お父さんが変な話しするから正樹君が困ってる。ねえ?」

智彦の母は優しい笑顔で正樹の顔を伺察したように言った。

「正樹君、夕飯まだでしょ?」

「あ、はい……」

「此処で食べていくと良いわ。すぐ用意するからちょっと待っててね」

「あ、ありがとうございます」

「電話使うと良い。君の両親に連絡しておきなさい」

言って智彦の父親は玄関へ案内した。下駄箱の上にある白い電話機を目の前にして正樹は思った。やっぱりそうだ。思った通り、智彦が消えたこの場所は……。正樹は間違いなくここは向こうとこちらの世界を結んでいる場所なんだと確信した。自分は願ったとおりもう一つの世界へこうして来れた。只、向こうと此処は智彦の言っていた通り世界がまるで違う。引越し? 何の事だろう……。智彦の両親は自分の事を知っている。と言う事はこの世界では自分もこの辺りに住んでいると言う事か? 家族? 此処では、自分の両親も生きているのか? 正樹は心の中で話の一つ一つを整理した。

「正樹、それ良い腕時計だな。ちょっと見せてくれよ」

正樹が電話番号を分からずおどおどとしている様子を見かねて、智彦が逸らすように言った。智彦は続けた。

「とりあえず電話は後にして中に入れよ」

「それじゃそうしなさい」

智彦の父親に言われて正樹は居間へと連れて行かれる羽目になった。もはやこの状況から逃げ出すことは出来ない。正樹が居間に座った。その時。

「ところで智彦の言うとおり本当に良い時計だね。何処で買ったのかな?」

「え? あ、これは智彦から……。いや、あの、向こうの友達から貰った物です」

「ああ、引っ越す前に向こうの友達から貰ったやつね。凄く良い時計だな。何でいつも付けてなかったんだ? でも良いよな。俺が最近人から貰った物と言えばこれだけで、後は――」

言われてその物を見た瞬間だった。正樹は驚愕した。

「智彦。お前、それ……」

「え? ああ、これか? 恵から貰った奴だよ。昨日話ししなかったけ?」

智彦はそう発してから正樹の耳元に口を近づけた。囁く様に続けた。

「昨日恵に告白して付き合った時、貰ったって言っただろ? 正樹、一昨日はありがとな。全部正樹のおかげだよ」

正樹はこの赤いバンダナに見覚えがあった。確か恵と付き合い始めた頃に彼女から貰った物と全く同じものだ。いや、間違いなく智彦が今手にしているそれは自分が恵から貰ったはずの物だと彼は気付いた。

正樹は思わず後ろポケットを探った。ポケットからバンダナが消えている。嘘だろ? 正樹がそう思ったその時。

「御免下さい――」

玄関のチャイムと共にコチラへ声が届いてきた。

「ハイ、今行きます」

智彦の母がキッチンから玄関先へと向かっていく。

「あら、奥さん」

「こんばんは、夜分遅くにすみません。あの、こちらにうちの息子が――」

女性の声が正樹たちの座る居間の方まで届いた。その女性の声はどこか懐かしく聞き覚えのある声。正樹は気付いた。この声は……。そうだ、自分の母親の声だ――! 正樹は驚愕しながらそう察し、飛び上がる様にして立ち上がった。が、しかしその瞬間、彼の頭を重い目眩が急に襲って来た。正樹はたまらずその場で膝をついた。遂には、完全に倒れてしまった。

「おい、正樹。どうしたんだ? 大丈夫か?」

「正樹君。おい、しっかりしなさい」

朦朧とする意識の中、正樹は耐えられず目を閉じた。そして「うぅ……」と、思わず重い唸り声を上げてから、意識をしっかりさせようと再びゆっくり瞼を開いたその時、彼は辺りが真っ白で何も無い世界を目の当りにした。その後、この白い世界が徐々に黒色へと塗り潰されて行くのが見える。やがて周囲は、互いが交じり合った灰色から暗闇と化した。正樹は周囲を見渡した。が、しかし、何一つ見えない。この真っ暗な空間は、重力を感じさせぬほどに軽い――。目で確認する事は出来ないが、とにかく今、正樹自身は宙に浮かんでいる様な気がした。

「誰か、誰か居ませんか?」

正樹はそう言葉を発したつもりで居たが、向こう側にあるであろう壁に弾かれ、コチラへと何重となり戻ってくるだけ。

「嗚呼……」

正樹は思わず絶望に満ちた声をあげた。

「正樹君――」

後方辺りから急に、聞き覚えのある声が正樹の耳に届いた。この声は……、まさか――! 彼は思わず後方を振り返った。園長先生の声。

振り返り見た先に園長先生の姿は見えない。しかし、代わりとして、何やら小さな穴がその向こう側に開いているのが分かった。穴は次第に、光を大きく周囲へと放って行った。

「あっ――!」

瞬間、とてつもなく眩しい光が正樹の目を襲った。途端に彼は、先ほど見つけたあの小さな穴へと一気に吸い込まれて行った。正樹は、はっとした様に目を覚ました。彼は元の世界へと戻っていた。

「ここは……元の世界か?」

自分は幻覚を見たのか? 正樹は少し気が動転した。辺りをもう一度見渡す。やはりさ

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