連載小説 この世の果てにおいて(愛するということ2) 7

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滝川寛之の無料連載小説

 

佳子は高校を卒業後、東京へ向かった。四月より世田谷の女子寮から私立大学へ通うことになっている。

正直、東京の大学ならどこでもよかった。都内のどこにするかは偏差値とにらめっこして決めたこと。大学への思い入れは全くもってない。昭和女子大学管理栄養学科がそれ。

栄養士になりたいだとか本当に微塵もないけれど、将来が期待できる職業だと言われたことを思い出す。でも大学を出れば何処だって同じなのでしょう? 特にこだわりが無いのはそれだけではない。当然、上京理由の先には寛之がある。諦めきれなかったといえばそこまで。

三軒茶屋の女子寮は二人一部屋。二段ベッドのワンルームスペース。ユニットバスのシャワーはトイレと同室。キッチンは都市ガスの火口一つだけで狭い。流しもまな板二枚分ほどしかない。ルームメイトは九州博多の子。名前は辻川沙希。

上京する前に大学側から持ち物について指定があった。部屋のスペースが狭いために制限しなければいけないと話していたのを思い出し、なるほどな、と寮生活初日に理解できたこと。暫くはアルバイトをせず、仕送りで賄うつもり。まずは東京の土地に慣れてから。両親もそう話していた。

佳子は寛之からの手紙を読んだ高校時代、同級生の彼氏君が出来た。寛之のことを忘れたい一心で交際の申し出を受けたつもり。しかし、それがかえって傷心深くなるばかりでどうしようもなく、二か月もしないうちに彼女の方から別れを告げた。それっきり誰の交際も受けていない。卒業まで一人で居たかった。

東京の大学からは彼氏を作るつもり。相手は当然、寛之さんしか考えてない。たとえ彼が結婚していようとも構いやしないとさえ考えていた。二股の浮気相手だろうが不倫だろうが略奪して幸せになるつもり。幸せにするつもり。

確かに寛之さんからの最後の手紙には含みを持たせているように感じていた。自分のことが好きだけど、あえて突き放している気がした。それは手に取るようにしてわかること。だからこそ略奪愛に自信があった。寛之さんに責任はないのよ。ただ近くの女を選んだだけ。わたしが傍に行けば直ぐに乗り換えてくれるはずだわ。そう思った。

いつのまにか自分は恐ろしく怖い女になったなと思うけども、どうにもならない想いというものが、更に欲求を掻き立てては涙が止まらない。こんなに人を愛したことは生まれて初めてのこと。若いからだとか、恋愛の経験が少ないだとか関係なく、あの頃感じていた運命の相手だという気持ちが、何も起こらないままに離れたことでさらに増大し、諦めがきかない。きかすわけにはいかないとさえ思った。執念といえばそこまで。

両親と別れを告げた那覇空港出発ロビーは、シーズンオフだというのに人だかりで、それらのほとんどが、佳子ら家族とおなじ旅立ちにおける集まりだった。旅立ちの者は学生服だったり私服だったり様々。佳子は私服の類。ワンピースでは寒いと思ったのでデニムな格好で決めてマフラーを用意した。中にはタイツもつけている。三月の東京といえば五度から十四度。沖縄で言えば真冬の極寒。それでも東京では暖かくなった方なのか? 考えてみたけど未経験なので何も感じることができない。五度の世界など初体験で、どれほどの寒さなのか、想像を超えて宇宙空間のよう。行けば分かる事。結局はそう開き直った。

「ねえ、佳子ちゃん。あした一緒に街へ出てみようよ!」

初日に意気投合したルームメイトは言う。沙希の言い分はごもっとも。自分もそう思ってた! 返した言葉がそれ。

「やっぱりまずは渋谷よね――!」

そうだね。何となく返す。本音は近所を散策したい。何処に何があるのか把握しておく必要がある。黙ってると勿体ないと思ったので、その旨伝えると

「ああ! それもそうよね! やだ! あたしったら事急ぎすぎ! あはは! もう舞い上がり過ぎちゃってて肝心なこと忘れてた! てへっ!」

佳子は微笑を返す。これから絶対に仲良くしていかなくてはいけない相手。重要なパートナー。ルームメイト。慎重に言葉を選んでいかなくちゃ。考えている事。

「三軒茶屋駅の周辺って、結構、面白そうよね。やっぱりカフェが多いのかなぁ? 昔から茶屋として栄えてたみたいだし、そうなのかも――!」

就寝する。

翌日の朝、二人で近所を散歩する。コンビニエンスストア、こじんまりとしたスーパー、小さな公園、銀行、郵便局、などを発見する。道は大して複雑ではないし目印もつけやすく覚えやすい。寿司屋と日本そば屋などの飲食店もチェック済み。ピザ屋や小僧寿しチェーンなども発見。おおかたアルバイトはそこら辺なのかもな。思う。

佳子は上京前に携帯電話を契約してある。phsだが、沖縄より電波が良い。今度寛之へ手紙を書くときに番号を添えておくつもり。いちど墨田区へ行くことも忘れなく。其処ら辺は抜かりなく行動したい。考えている事。

――寮にはまだいるのだろうか。寛之について。

一番の不安はそれ。

居なかったとしても職場へ電話なりして聞き出せばいい。もしも離職しているのならどうしようか? その時は探偵しかない。若しくは実家へ電話よ。一つ一つ整理する。抜かりはない。

「ねえ、何考えてるの? ポーっとしちゃってさ」

いけない。まただ。最近よくそうなる。上京が決まってから毎日そう。これで寛之と再会できなかったら、わたし、もうどうにかおかしくなるのだろうな。精神を病んで。

大学はちゃんと卒業することを決めている。そこに関してはしっかり責任を果たしたい。親が出した大金を無駄にしたくないものね、当然よ。心に誓っている事。でもでも! 結婚はあるのかも? 寛之さんと。そんな夢を見つつ。

一旦、寮へ戻ってから、食堂で昼食をとる。エビフライ定食だった。そういえば寛之さんは釣りしているときに話してたけど、エビとかのアレルギーだったわね。食べると顔がパンパンにはれ上がって失神するとか言ってたっけ? わたし、何にもアレルギーないからだけど、想像もできないくらいに大変そう。

なんだか疲れちゃったかな。午後はゆっくりしたい気分。そう伝えると、沙希は承知してくれた。二人して部屋中で会話を楽しむことにする。話し疲れたらテレビでも観ればいい。家電はあらかじめすべてそろっている。ブラウン管の小さなテレビだけど。佳子の家では大型の液晶テレビだった。お父さんが映画とドキュメンタリーを観るのにこだわってたから。音響も素晴らしくそろえられていた。

佳子は部屋へテレビを置くことに関して許可されていなかった。引きこもって一家団らんの機会が減ることを両親は懸念していたのだろう。訊かずともわかる事。だから文句の一つも返さなかったし、別にテレビっ子というわけでもなかったから。どちらかというとラジオのほうが好き。

寮三日目の朝。

大学へはあと一週間ばかり日にちがある。沙希は早々にバイト先を考えていたのか、コンビニで無料の求人情報誌を何度も捲っていた。ねえねえ、佳子は本当に暫くやらないの? 出来れば一緒にやりたかったなぁ。ほら、心強いじゃん? 面接とかさ。わたしだって東京は初めてだし、色々不安が多いのよね。やっぱりそうなんだ? おもうこと。

「わたしんちはあまり裕福じゃないから」

その一言が胸に刺さる。なんだか申し訳ない気持ちで一杯。同時に自分はなんて幸せ者な家庭に生まれたんだろうと両親への感謝が絶えない。絶対に大学を出なきゃ。いずれは沖縄に戻ることも考慮して。寛之さんを連れて帰郷するの。わたしが寛之さんの面倒を見たってかまわない。わたしが支えてみせるの。

「小僧寿しがいいんじゃない? 若しくはドミノピザかミスタードーナツ」

「そうそう! わたしもそう思ってるのよね。あと、マクドナルドとか?」

「そうね、なるべく楽できて稼げる奴じゃないと。ほら、大学も行ってて疲れてるし」

「それに近所じゃないと嫌だしね! 帰り道とか怖いじゃん?」

「そうね、そこまでは考えてなかったけど」

「そうよ。ここは東京よ? 危ない変態が多いって有名じゃない!」

「たしかに!」

「それに殺人犯だって多いのよ? 都会だけに」

「そうね、何だか怖いところに来ちゃったかな?」

「でもでも、それ以上に魅力的な街なのよ。ここはそういうとこなの」

「それを言うと何だかホッとするかな。そうでもないけど」

「あはは! そうね。でも、都会って海外も地方も同じことよ。結局は危険が伴うの。人が多いだけにね」

「そうね、そう割り切ったほうが楽かもしれない」

「そうそう! それ大事よ?」

「うふふ!」

「あはは!」

「それで、バイトなんだけど……」

「やるの?」

「いえ、そうじゃなくて」

「なあんだ。結局すぐにはやらないんだ?」

「もう少し考えてからにする」

「オーケーオーケー!」

「でもでも、直ぐに始めてみても良いのかなって思ってるの」

「わたしと一緒なら?」

「うん!」

「たのしいわよー? わたしって博多っ子だから明るすぎるし」

「そうね、わたし恵まれてるかも」

「ルームメイトについて?」

「色んな事に関して感謝したいって考えてる」

「そうね、佳子は本当についてる子だと思う。そういうオーラ出てるし」

「そうかな?」

「だってお嬢様だもの! 芋っ子のわたしと全然違うわよ! あはは!」

「これからよろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ」

「わたし決めた! 沙希と一緒に働く」

「ええー! いいの?」

「うん!」

「ほとほとに疲れるわよ? 大丈夫? ついていける?」

「大丈夫」

「高校の時、バイトしてなかったんでしょ? 仕事ってきついのよ?」

「そこまで世間知らずじゃありません。バイトはしてたの」

「へえ? どんな仕事?」

「アメリカンなファーストフード店」

「マクドナルドみたいなやつ?」

「そう。ドライブインもあるやつなの」

「スルーだけじゃなくて?」

「うん」

「日本に中々ないわよね、ドライブインだなんて。九州でも滅多になかったかな」

「そうね、沖縄特有かもしれない。アメリカかぶれだから」

「そもそもアメリカンスタイルじゃない」

「そう、沖縄発祥じゃない」

「あはは!」

「うふふ!」

「そういえば、沖縄のタコスは美味しかった。修学旅行で食べたの。タコライスも一緒にね。リゾートホテルの近くにパーラーがあったのよ」

「へえ、何ていうホテル?」

「恩納村っていうところのホテルだったけど、忘れちゃった」

「ああ! あそこなら近所に多いものね」

「そうなのよ! ガラス工房も近所にあったし」

「ああ! たまに行ってたわ。小学生のころだけど」

「そうなんだ?」

「うん、小さい頃は、よく海洋博へ行ってたから。その帰りに寄ってたの」

「へえ」

「沖ちゃん劇場が大好きで良く行ってたなぁ……」

「いいなぁ! 沖ちゃん劇場」

「うん」

「こんど観光の時、ガイドしてよ! 楽しみにしてる」

「いいわよ、楽しみにしておいて」

消灯する。今日も沢山話した。面接はまだだけど、バイト先も決まって満足。とりあえず三件あてにした。小僧寿し、ミスタードーナツ、モスバーガー。

佳子は夢を観た。青い青い夢の世界を、観た。寛之や……。やれ、寛之や……。なに? どういうことなの? あなたは、誰? そしてわたしは何故にここに居るのだろうか? 全く訳が分からない。自身が夢を観ているということすら忘れて、あたかも現実の世界にて目撃しているような感触がする。匂いがする。灯が差している。本当に青い世界。

「寛之や……。やれ、寛之や……」

わたし、寛之さんじゃありません――!

「佳子……。きさまは寛之も同然じゃ。お前らは一心同体なのじゃからのう」

どういうことですか? わたし、全く訳が分からないの――!

「いいか、よくきけ……。二つは一つになるのじゃ。いいか、よくきけぃ……」

二つが一つになる? どうして――?

「若いよのう……。世界が二つある事を知らぬとはな。なあ、佳子よ……」

この世界が二つ目だということですか――?

「それは訪れれば悟る事じゃてのう……。やれ、寛之や……。寛之や……」

わたし……。わたしは……!

「死ぬ運命とはどうあるべきなのか? わかるかぁ? なあ、佳子や……」

死ぬ? 私は死ぬんですか? どうして――!

「死ぬとはなぁ、佳子よ。苦しみ藻掻いて、但し、一瞬でもあるゆえのぅ。佳子や……」

く、くるしい……! だれか! だれかたすけてぇ――!

「首を絞められて苦しいか? ほうれ、苦しみ藻掻く顔をもっと見せろや、佳子よ……!」

 

「い、いやぁ――!」

 

ハッとして目が覚める。ハアハアハアハア……。ゆめ、ゆめだったのね……。それにしても恐ろしくも酷く汗ばむ夢だった。それから、なんだか寒気がよだつようにして鳥肌の立つ世界でもあった。青の世界。何故に青かったのだろう? 分からない。全く見当もつかない出来事。世界。夢。

考えているうちに朝が明けてしまう。結局、寝不足で今日は力なく終わってしまいそう。春先で良かったと思う。もしも夏場なら、この寝不足では倒れてしまいかねない。熱中症どころか、汗ばむだけで気を失っただろう。おもう。

あの見知らぬ大人は誰だったのだろうか? 考えてみてもしょうがない。ただ単に夢に過ぎないのだから。そう割り切ってしまえば楽になる。そうでもない。佳子は昔、よくデジャブを見たことがあって、心霊現象について調べたことがあったくらい。結局、図書館の書物だけでは気付きが得られなかったけれど。

「霊的現象、か……」

「え! なにそれ――?」

しまった! おもう。いま渋谷に来ていて、カフェで食事をとっているのだった。最近よく一人の世界へ夢中になったりする。夢想。空想。想像。

「ごめんごめん。なんでもないのよ。それにしてもこのパスタ美味しいね!」

「ほんとう、同じものにしてよかったわね!」

「うん!」

オーダーしたのは海鮮スープパスタ。トマトベースであっさりしているが、濃厚な貝エキスとバターがアクセントとして強烈に効いている。

「次、どこいこっか?」

どこだっていいじゃない。発しかけて止めた。彼女はただ言っただけだと悟れたから。渋谷へきて「どこ行こうか」などという発想は、当たり前の様なもの。人が多いとはそういうことだから。でないと何の魅力もなかっただろう。

スクランブル交差点の角に位置するこの店は一階と二階が店舗スペース。佳子と沙希の二人は窓際。全ての席がそう。眺めてみると人だかりで大移動する外界は、なんだかとても賑やかでいて、窮屈で、はちきれそう。それぞれが個性的な格好をしており、人間観察にはもってこいの場所。空調で快適なスペースから、まるで神様が下界を見下ろしているかのような錯覚にさえとらわれる始末でどうしようもない。しかし、それがなんだか心地良いと感じた。

 

――まだ東京になじんでないのにおかしな話よね。

 

思うけれども、そんな気は一瞬で吹き飛ばしてみせた。しかし、一つ一つのしぐさに都会っ子をイメージしてみてもつまらない。肩がこるだけ。そんなことはどうだっていいじゃない。ふっ、と一人でにやける。ほくそ笑みに近い。それを見つめていた沙希が言う。佳子、今怖い顔してる! そんなことはない。彼女もいっしょに、にやけたから。

 

――夢は何を言おうとしていたんだろう?

 

渋谷からの帰りの電車で思う。車内での会話は周囲に迷惑だと思ったから。結局分からない、何故にそんな夢を観たのかについて。寮に着く。

時刻はすっかり夕方で、広い食堂では夕食が準備されていた。二人はとりあえずシャワーを終えたかったので、直ぐには食堂へ寄らず部屋へ戻った。荷物もある。

「沙希からどうぞ入って」

それじゃ甘えて。彼女から先に済ませる。湯船は張っていないのでニ十分ほどで出てくる。ドライヤーをしている間に佳子が続く。

今夜の夕食はハンバーグステーキ定食。何だか懐かしさを覚える始末でどうしようもない。お母さんが得意としていた料理の一つだから。今日は何だかついてる、ひしひしと思うこと。

夜はぐっすり眠れた。歩き疲れているし、眠りが深く夢を観ない。つまりはあの悪夢もないということ。そんなこと就寝前にはすっかり忘れていた。朝になる。

「おはよう!」

沙希の一言。明後日からはいよいよ大学が始まる。その前に行っておきたい場所、それは寛之の住まい。寛之の職場。彼は離職せずに今も頑張っていることを知る。それは彼のお母さんから聞いた話。三日前に電話をかけてみた。優しそうな声のする母親だなという印象で、少しばかり会話を楽しんでみたほど。自分のことを良く思ってくれているみたい。それについて安堵した。今日は一人で行動するつもり。

三軒茶屋駅から墨田の京成曳舟駅へは渋谷経由で行く。乗り換えは一回。電車にまだ慣れてないので迷うかもしれないが、大丈夫。朝からの行動だから、時間でカバーできるとにらんだ。

京成曳舟駅からは東京マップがたより。それから電信柱のやつ。浅草向けへ歩いてニ十分ほどの場所に職場と寮はある。ぬかりはない。

場所に到着したのは二時間半後の三時間手前。思っていたよりも早く着くことが出来た事に安どする。とりあえず一つクリアした気持ちで一杯。手持ちのおみやげを忘れていない。駅前の屋台でタイ焼きをいくつか購入しておいた。飲み物は目的地の近くで買えばいい。そう考えて。

 

「あのう、ごめんください――」

 

今日は都合よく日曜日。しかし思う、平日だったらもっと呼びやすかったのに。日曜日は寮で寝ていない可能性もあるから。

心配していた通り、チャイムに誰も出ない。職場のシャッターは閉まっている。恐らくこれが寮の入り口だろうという裏口を探して一回りする。もう一つ裏手の細い路地から確認できる建物奥の入り口がそうなのだろう。おもう。敷地に入って奥へ進む。

 

「すみません、あのう! だれかいませんかぁ――?」

 

勇気を出して大声を発した。変質者が出てきたらどうしようという心配など考えてもいない。そこまでは思考が回らなかったといえばそこまで。とにかく一生懸命で身の安全について考えてもみなかった。

 

「――はい? どちらさん?」

 

やっと降りてきた方は中年よりもやや年配。白髪で無精ひげも白い。寝癖が強烈なことから今起きたところなのだろうということが推測できる。しかしとにかく吐く息が酒くさい。おもわずしかめっ面をしてしまった。申し訳なくおもう。顔を元に戻した。

「あのう、こちらに上間寛之さんって方が居るはずなんですけど……」

「ああ! ヒロの野郎の連れか? それならまだ帰ってきてないけど?」

「え? 泊りですか?」

「うーむ、いい辛いけど。そうだ。あいつもいけねえ奴だな。こんな別嬪さんいるのに」

「いえ、わたしはまだ彼女ではないんです。あの……その、沖縄からなんです」

「ああ! そういうこと! なるほどねぇ? お友達で旅行がてらかなんかで会いに来たってことだね? なんだそういうことか! あはは! てっきりおじさんは、あの馬鹿野郎が二股かけて偉い騒ぎになってるんじゃねえのかなって考えちゃってたよ! あはは!」

「いえいえ、何の問題も起きてないんです……。それで、あのう……」

「いつも夕方には帰ってきてるぞ。どうするよ? 待つわけにもいかないだろう? 電話で約束しとけばよかったのに。居ないってことは、しなかったのかい?」

「ええ、まあ……。あの、驚かせようかな、とか、考えちゃってて。すみません!」

「良いんだよ、おじさんに謝らなくても」

「あの、このことは内緒にしていてください。おねがいします!」

「お嬢ちゃんが来ていたってこと? まあいいけど?」

「ありがとうございます。また日を改めてきますね。それじゃあ失礼します」

正直言うと、とても緊張した。会うことが出来なかったことが尚更、その思いを強烈にさせた格好。もしも部屋に上がり込んで待機していたらどうなっていただろうか? 頭を冷やした後に考えてみるとぞっとする。恐らくはレイプされていたはずだから。ここは東京よ? 次からもっと警戒心をもって気を付けていかなきゃ。思うこと。

 

――明日はギリギリ休み。そうよ、明日もくればいい。平日の昼だから間違いなく会える。ええ、そうね。きっとそうよ。そうに決まっている。でもでも、やっぱり彼女さん居るのね。それがすごくショック。分かってたことだけど。どうする? どうするって、奪うに決まってるじゃない。勝つのはわたし。そうよ、絶対に負けないんだから。

 

タイ焼きはすべて沙希に譲った。自分の分は要らないと言って。食欲がわかない。もう夢中になってしまっているから。心がはちきれそうでしかたがない。それだけで空腹を免れた。脳のドパーミンが多量に放出されている。結局、翌朝まであまり眠れなかったけれど、何故か気だるさを一切感じない。どういうことだろう? 考えてみてもしょうがない。それが恋なのだから。そう割り切ればすっきりする。

 

「あのう、ごめんください――」

 

朝一から出たつもりだけど、着いたのは結局十時過ぎ。しかし決して悪い時間帯ではないと考える。十時の休憩時間にこれたのはついているとさえ思った。

この日、佳子は寛之が仕事を終えるまで部屋で待機した。帰るわけにはいかないと思ったから。何故か、次が無いような気がしてならなかった。今日を逃せばもう会えないような気がした。それは気のせいではなかっただろう。寛之との行為の後にそう思う。生まれて初めての経験。なされるがまま流れては、恥ずかしく踊った。それから初めての味。

 

「情があって直ぐにはパクと別れられないけど、構わないかい?」

 

彼の言い分はごもっともだと思う。迷惑かけているのは自分の方だから。大丈夫、わたしだけになるの待ってるから。でも、一週間に一回は会いたいの。それから毎日電話したい。それくらいはいいのでしょう?

まるで不倫をしているかのような錯覚に陥ることもある。止まらない想い。佳子はなんだか沼にはまっていることに気付くことなく、唯々、寛之に何度も抱かれた。

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