連載小説 愛するということ 47

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恵は実おじさん達に中田姉弟の身に起きた出来事を知る限り何度も話そうとした。しかし、小百合が話さなかった理由を知らない事と、静かに眠っている“事”をわざわざ起し、それが原因で大騒ぎになってしまう心配が邪魔をした。

――いったい此処に住む東京からの滞在者は、どんな人で、どんな顔なのだろう? 自分が夢の中で見た人物と同じ、恐ろしい声と顔をした人なのだろうか?

そんな事を考えながら、今日も滞在者の住む家の前を通り過ぎようとした時、恵は急に足を止めた。

「――こんにちは」

余りにも不意を食らったようにいきなり過ぎた。恵はびっくりして返す言葉が急には出てこなかった。

「こ、こん、にちは……」

恵は一瞬、相手の顔を見て他へ目を移した。相手がまじまじとこちらを見ている。恵はたまらず足早にこの場を立ち去ろうとした。

「ちょっと待って! 君、最近まで見ない顔だね。名前、なんていうの?」

男はそういって恵を呼び止めた。

「あっ、僕の名前は山岸守だよ。よろしくね」

照れくさそうに男は言った。

「上村……、上村恵です……」

恵は瞬時に思った。違う。夢で見た人と似てるけど、この人じゃない。夢の中に出た男は、もっと恐ろしい顔をしてた。それに話し方も違う」

恵の想像は見事に覆された。

「上村恵か、良い名前だね。沖縄の本島から、来たのかな?」

「はい」

「そうか、本島か。あ、そう言えば、何年か前に、仲泊さんの所にも本島から来ていた子が居たな……。名前は確か……、中田、中田小百合ちゃんって言ってたな。健二君って言う弟と一緒に来てた。もしかして、知ってる?」

「いえ……、小百合さんって言う人とは、会った事が無いです」

「そう。そうか、知らないのか。あ、いや、もしかしたらね、知ってるかなって思ったんだけど」

――健二なら知ってる。恵はそう言い掛けたが、しかし、その事に関して、深く訊かれるのが嫌だった為、話すのを止めた。恵は思わず避けるように発した。

「あの……、そろそろ帰って良いですか?」

「あ、うん。ごめんね、呼び止めて」

「いえ、別に良いです。それじゃ」

「ああ、またね」

――やっぱり違う、この人じゃない。

恵は、家に帰ってから小百合に関して気持ちを整理しようとした。出来なかった。

だが、とりあえず実おじさんたちが「気味が悪い」とは言うものの、彼に対して何かしら疑いの目を向けない理由がこれで分かった。男は誰の目からも堅実に見えたのだ。健二や小百合さんを不幸にしたのはあの人じゃない。

「それじゃ、一体誰がやったって言うの?」

恵は独り言でそう自分自身に問いかけた。

 

守と出会った日から三日経過した夕方。恵はこの日もお気に入りの場所で砂浜を眺めてから、学校から帰るつもりで居た。お気に入りの場所に着いた。今日は誰も遊んでいないようだ。砂浜は恵一人しかいない。久しぶりに、砂の上を滑る小波の音しか聞えなかった。今日は本当に心が落ち着く。そう思った時。

「おや、また会ったね」

後方からいきなり男の声が届いた。

恵は座ったままの状態で振り返った。山岸守。

「こ、こんにちは」

「こんにちは。此処、よく来てるの?」

「あ、はい……」

「そっか。本当にここの砂浜は綺麗だね。久しぶりに観ると尚更癒される」

恵は山岸守の手元を見た。両手に食料品の詰まった買い物袋を二つ三つぶら下げている。彼は学校の向こうにある商店で、買い物した帰りの寄り道なのだと言う事に、恵は直に気が付いた。

「久しぶり、なんですか?」

「うん……」

そう言えば、恵がこの島に着てから、このお気に入りの浜で一度も守を見た事が無い。「そうなんですか」

恵は彼が久しぶりと言った言葉に嘘は無いと頷けた。

「実は言うと僕は体が弱くてね。それで調子の良い時以外は余り外に出てないんだ」

「え?」

恵は正直驚いた。それ位にこの山岸守という男は誰の目から見ても健康そうに見えた。

「あの、何処か悪いんですか?」

「うん、まあ、ちょっと肺をね。でも最近は調子が良いよ。一昨日君とあった日からなんだかずっと体の調子が良い」

「そうなんですか……」

少しだけ間が空いた。守がニコッとした顔でこちらを見つめている。恵はなんだか少しだけ恥ずかしくなった。

「あの、私、そろそろ帰ります。それじゃ」

「ちょっと待って。家、近所だし、一緒に帰ろう。送っていくよ」

恵は特に断る理由がなかった為、一緒に帰る事にした。辺りは蜜色に変色し始めている。夕暮れはもうすぐ。守が歩きながら話しかけてきた。

「恵ちゃん、でいいかな? 恵ちゃんは中学二年か三年生?」

「はい」

「やっぱりそうか。いや、見た目はもうちょっと年上に見えるんだけど、此処には高校が無いらしいからね、直に分かったよ」

恵はこれまで同年とは比べ物にならないほどの体験をし、また、彼女の中には倫子と知

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