無料小説 処女作品@「愛するということ」第八章 =45=

愛すると言う事~第八章

香織が完全と居なくなってから、正樹は久しぶりに再び孤独な休日の繰り返しに戻っていた。彼女と別れてから最初の日曜。この日、正樹は一日中何もする気が起きなかった。正樹は今、部屋に一人物音を立てる事なく壁にも垂れて座り込んでいる。正樹は向かい側の白い壁の上辺りを見た。石膏ボードの上にクロスが貼られたこの窮屈な部屋の白い壁には、香織から貰った少し可愛い掛け時計が下っている。香織は二人の時間をこれから大切にしてほしいと、それを付き合って最初のころ正樹に贈った。正樹はその掛け時計をただ呆然と眺めては、香織の気持ちを踏み躙った自分に対して怒りとやるせなさを込上げた。恵の時と言い香織の時と言い、自分は何て勝手で愚かなのだろう。繰り返してしまった自分の浅ましさに、正樹は心底嫌気がさしたのだった。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」第八章 =45=” の続きを読む

無料小説 処女作品@「愛するということ」第七章 =44=

東京に来て、早速次の日から活動は始まった。もう泣いてはいられない。恵は次の日には新たな気持ちで身が引き締まっていた。活動はまず宣材の作成から入った。スタジオでプロのメイクに化粧をしてもらい写真を幾つも撮った。プロフィールには、出身は東京でそして名前は山本レナと書かれた。新しい恵の誕生である。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」第七章 =44=” の続きを読む

無料小説 処女作品@「愛するということ」第七章 =43=

あれから三ヶ月が経った。この島にも急な冷え込みから冬の気配がやっと届いた。中学生徒は夏服から冬服へと衣替えとなり、シーズンオフを迎える海辺の何処も元々少ない観光客の姿が全然見られないようになった。海は毎日しけた顔を見せては、夏のいつもよりも力強く白波を打ちつける。風上から飛んできた海鳥が何処か寂しく遠くを眺めていた。恵は今日、最終的な決断をするつもりだった。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」第七章 =43=” の続きを読む

無料小説 処女作品@「愛するということ」第七章 =42=

愛すると言う事~第七章

 あの事件から翌年。恵が中学三年になったとき、彼女の長い人生における一つの転機が訪れた。空はとにかく遠くの向こうまで青く、目の前の緑の端から渚へと白い砂が斜めに流れ、そして、とてもカラフルな魚が泳ぐ海が微笑みながら踊り、太陽がそれらに美しい光を与えている。そんなお気に入りの場所に、恵と聡子が制服姿のまま居る時だった。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」第七章 =42=” の続きを読む

無料小説 処女作品@「愛するということ」第六章 =41=

正樹と香織が出会ってから一年が経った。正樹はこの頃、関西や九州の方へと旅立った兄達とは音信不通の状態だった。そう言えば、兄達は元気にやってるのだろうか? ふと彼が思い出した夜の事だった。正樹は夕食と風呂を済ませて部屋に戻り、ビール缶のプルタブを引いて口を開けてから久しぶりに小型テレビの電源をつけた。正樹はここ数年ろくにテレビを見る事がなく、いつも激安ショップで購入した安物のミニコンポで音楽を聴いたり、やり始めたばかりのギターの練習をしたりすることが多かった。点いたチャンネルでは、見たことのないドラマが始まった所だった。正樹は何気なくその番組を見る事にした。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」第六章 =41=” の続きを読む