無料小説 処女作品@「愛するということ」第五章 =33=

恵は今日、体調不良を理由に学校を休んだ。彼女は部屋の窓にある遮光カーテンを閉めた薄暗い部屋で一人、自身のベッドで横になっていた。恵ともう一人この荘に居た当直の先生は会議で居ない。今、恵は一人だった。

平日である他に誰一人としていないこの日の昼は、スリッパの音や話し声、そしてまた一番に騒ぎ出す者が無く、信じられないほど辺りは静かだった。休日の今時間頃ならば周囲が煩くて少し遠くからしか聞えない鳴き虫や小鳥などの声が今は音高くとても身近に恵の耳へとずっと届いてくる。

恵は昨夜あった出来事を、怖くて誰にも相談できずに居た。何度も何度も体を洗った。しかし、流された汚れは表面に感じる物だけで、当然性的暴行の記憶と傷がそれだけで消え去るはずなどなかった。だが、彼女は何度も体を磨いた。途中、悔しさからやりきれない気持ちで一杯になり、感極まった彼女は顔をシャワーに埋めて声を殺したまま人知れず密かに号泣した。自分の体を初めて男に許したあの夜の前日に見た夢はとうとう現実となった。あの夢では今の自分はまだ始まりに位置した場所に居る――。恵はこれ以上この先の夢を思い出すのが怖かった。

「お願い、お母さん助けて。お姉ちゃん、助けて!

恵はシャワーから吹き出た御湯に顔を打たれたまま心でそう叫んだ。

彼女は分かっていた。彼らは一度では決して終わらない事くらいは容易と読める。迷った。正樹たちのように、今すぐにここから逃げ出してしまいたい。でも、一体何処へ逃げれば良いのだろう? 母屋が全焼したあの夜、周り全てが消えてしまった彼女に当てなどあるはずが無かった。

恵はベッドの中で急に目眩がした。途端、感じの悪い汗と共に何だかとても酷い寒気がしてきた。彼女はたまらず側に無造作にあったタオルケットの端を両手で左右に掴みひらりと体へと被せた後、その中で身を震わせた。その直後、昨日の出来事を脳が無理やり思い出した。嫌! 恵は思わず両手に握るそれに顰めた顔を思い切り当てた。その時だった。

「めぐみ――」

突然、誰も居るはずの無い部屋の天井の方から響き加減な声が聞こえてきた。その声は、何時しか聞き覚えのある、透き通った様に綺麗で優しい声だった。恵は声の主を直に分かった。「お母さん!」驚きと喜びに満ちた声で発した。

声が届いて来た天井を見ようとすばやく二段ベットの下の階となるその位置から上半身を乗り出し上へと顔を見上げた。恵は唖然とした。

今見ている天井があるはずのその場所は不思議な事に、まるでドーナツの様な円形状に溶けた穴が開き今とは正反対の夜の空がその空間から見えた。恵は更に気付いた。中央の円は天井となっているわけではなく真っ黒としていて、見た目には狭いが、何かもう一つの大きな存在を感じさせる――。どうやら今、局地的に三つの空間が目の前で日食の様に重なっているらしい。重なり見える二つの空間に人影らしき物は一切無く、今もまだ母の声だけが只々ずっとどちらか向こうからコチラへと響いて来ている様に感じて聞えている。とにかくそれはとても不思議な現象だった。

「これは……夢なの?

 恵は夜空を眺めながら、これは夢だと疑った。瞬間、ドーナツ状に浮かぶ空間の外側となる空が今、恵の居るこの場所を一気に飲み込むようにして辺りへと広がった。そして最初となる恵が今居た空間はまるで存在を隠された様にして目の前から消えた。それは一瞬に近い出来事だった。恵は月の様に黒く浮かぶ一つ残された空間へ顔を向けた状態から一面に広がりを見せた夜空へと視線を移した後、今居る地上の周囲を見渡した。

「ここは……そうだわ!

ここは確かに全てが失われたあの場所そう、間違いなく今立つ第二の空間となるこの場所は、全てが消失し一体化した後、仰向けに倒れた状態からこの空を眺め、一人呟いたあの芝生の上あたりだった。恵は息を深く吸い込んだ。あの時と同じ様に、ひんやりとした空気に、緑だけの香りが色濃く感じる。それはとても懐かしい匂いがこの辺りには漂っていた。

「めぐみ――」

 再びあの声が何処からとも無く聞えてきた。恵は五感を回転させ感じるように周囲全ての気配を感じようとした。

「お母さん……何処?

 その時だった。たちまち最後に一つ残された黒い第三の空間が先ほどと同じ様に辺りへ一気に広がり第二の空間を完全と包み込んだ。世界は完全と暗闇に包まれた。今度は、真っ暗闇から男の声が聞こえた

「“違うんだ! 神様……お願いだから訊いてくれ! 違うんだよ”」

「“寒くて死にそうだ。誰か出してくれ”」

声はややエコー気味に、かつ響いて聞える。恵は気付いた。

「正樹……正樹!

「“智彦……。どうしてお前が恵と”」

うねり来るような重さの声が暗闇に響いた。この言葉は――、そうだ! 昨日聞えたのと同じものだ。恵は思わず目を見開き口を閉じた。

「“お願いだ。もう一つの世界でも何でも良い。だから戻してくれ! ”」

これはまさか――。まさかその後の続きが今聞こえていると言うのだろうか? 恵は自身の耳へと気持ちを集中させた。

「“嫌だ、まだ行きたくない。恵と智彦に”」

彼は今暗闇の中に居て自分に会おうと必死になって足掻いている事が彼女は言葉から伺えた。彼は一つの世界を信じた。自分はそれを否定した。しかし、それは少し違っていたかもしれない。恵は思った。もしや自分が今見ているこの現象こそ一つの世界となった瞬間ではないのだろうか? 一体化した空間、いや、世界は存在する。しかしそれは正樹の理想とはかけ離れて目茶苦茶で非現実的と言えた。

「“ちょっと待て。や、やめろ……やめてくれ”」

「正樹!

 思わず正樹の叫び声に我に返った恵が大きな声で彼を呼んだ。それは途端に起こった。真っ暗な三番目の空間が地上から見る月ほどに一気に収縮した。呆気に取られる間もなく目の前は再び過去の世界となる二番目の空間が顔を覗かせた。今、この世界は先ほど見たときとは違い、濃い霧が腰ほどに低く周囲に立ち込めている。

「めぐみ――」

 母の声が聞こえてきた。

「……お母さん、何処なの? 恵は此処だよ」

恵は腰ほどにまで立ち込めた霧を掻き分ける様にしながら前へ一歩一歩ゆっくり慎重に踏み出した。彼女は今、妖精の居た森の方へと無意識に向かっている。

は歩きながら向こうに見える森のその上に広がる夜空をコチラ側へ向けて眺める様にして見上げてみた。埋め尽くすほどの星の数がとても近くに感じる。それはとても綺麗だった。

森の入り口に着いた。恵は足を止め、一度振り返った。やはり誰の姿も感じない。

と、その時、何かが霧に隠れた自身の足に抱きついた。彼女は驚き、慌てて片足を目視できる位置まで上げた。抱きついたものが分かった。

「チャッピー!

 思わず声にした時、赤色の髪をした小さな妖精が彼女の肩辺りまで攀じ登った。恵がその妖精を手で触れようとした瞬間、それは消えた。その直後だった。

今度は森の中がざわつき始めた。突然記憶にある声や言葉物体がこの森の中で飛び交っては何処かへと消えて行った。どうやらここは脳の様に恵の記憶からなる集合体となっているらしい。呆気にとられた目の前で全てが飛び交った後、再び森の中は暗闇の静けさを取り戻した。再びと声は聞こえてきた。

「めぐみ――」

ひときわに霧が立ち込めた一点の場所からコチラへと声が届くのが分かった。

「お母さん!

恵は注意深く焦点を合わせた。すると、濃い霧がたちまちに薄れて行き、その奥に潜む蒼光なる物体を捉える事が出来た。恵は気付いた。母だ。今、彼女の目の前に身の回りを怪しげに青い光で波打つように光らせた母親の姿がある。それを見た恵は一瞬で全身が硬直し完全に身動きが出来なくなった。金縛りだった。しかし、それは酷く苦しいと言う物とは大分かけ離れた比較的優しい金縛りであった。恵はもう一度言った。

「お母さん……」

不思議な事に、空間に見える全ては断続的となった。そう、まるで止まったまま変化させた一齣をゆっくりと連続して捲り見る様な状態――。何か違和感のある時間の焦点が合わない“ズレた”感覚を恵はこの時始めて体験した。

母親が、コチラへゆっくりと近づいて来た。恵はそのまま動く事が出来ない。

「恵、大きくなったわね。元気だった?

 母はそう一言発してから恵の片手を両手で持った。瞬間、金縛りは解かれた。今、持ち上げられた恵の右手は、母・倫子の両手にとても優しく包み込まれている。母の手はとても温かかった。

「恵は元気よ。でも、信じられない。お母さんにまた会えるなんて」

 恵は突然の喜びに涙を流す感情を忘れていた。それ位に彼女は嬉しかった。

「そうね、お母さんも同じ気持ちよ」

「いつも何処か側に感じてた。でも、もう会えないと思ってた」

「これも神が与えた運命の一つ。これからも導かれる“時”に秘めた理由が、一体何に辿り着くのか、今、少しでも知る必要がある。その為に此処へ呼ばれたのよ」

「お母さん……」

「なあに?

「お母さん、恵、もう耐えられない。どうして、どうして酷い事ばっかり……」

恵はここで感極まり泣き崩れた。見かねた母・倫子が彼女の顔を自身の胸元へと寄せた。倫子もたまらずに涙をこぼした。一呼吸置いてから倫子は言った。

「大丈夫。大丈夫よ。恵、なんにも心配なんかしなくて良いわ。いつか、いつかね、全ては報われる。そしてね、恵――」

 母・倫子が、恵の顔を自身の胸元から離した。涙で潤んだ彼女の瞳を見つめて続きを話した。

「将来、彼を心から救ってあげて」

「彼って? 正樹の事?

 母・倫子は頷いた。

「今を負けちゃ駄目。頑張るのよ。とにかく全てが開放される為に生きるの」

「全てが、無駄にならない為に?

「そうよ、恵。全ての答えはその時光から放たれる」

「“隠された答えの意味が分かるまで”」

「そう、その通り。恵、貴女ならきっと出来るわ」

恵は姉の知子が最後に言った言葉をこの時思い出していた。“生きて、そして幸せになる。本当に死ぬほど辛い事があっても、そこに隠された答えの意味が分かるまで”あれはやっぱり知子の中に居た母が発した言葉だったんだと、彼女はこの時確信した。

「本当にもう駄目だと思った時、念じなさい。そうすればその時ね、きっと彼にまた会えるわ。どんな形でなのかまでは分からない。でもね、恵、それは何時か必ず訪れる」

「運命として?

「そう。でも、それはお母さんや知子の運命でもあるのよ」

母・倫子は一呼吸置いた。

「恵、貴女は一人じゃない。いつだってお母さんと知子は側にいるわ」

そこまで言うと、母・倫子の姿から出ていたオーラの様な青い光が、彼女自身の体へと凝縮された。恵はこの時の別れが近づいた事に気付いた。

「お母さん、また会えるよね?

「もちろんよ。恵、また、いつか会えるわ――」

母の感触が恵の手から薄れてきた。

「嫌! お母さん、行かないで!

 恵は思わず叫んだ。彼女はこれ以上母の感触が薄れ行かぬ様、思い切り力強く母・倫子を抱き締めた。しかしその時、恵の思い届かず目の前に立つ母の全てはまるでストロボのように一瞬にして大きな光と変わり周囲へと思い切りに弾かれた。

「嫌! お母さん、お母さん!

瞬時にこの空間は全てを満たした白色となった。しばらく目を開ける事が出来ないほどにそれはとても強烈だった。

「おさん……

呻き声を上げる恵が仰向けになった状態で目を覚ました。少し虚ろな目を少し開いてからまた「お母さん」と小さく呟やがて完全眠りから覚め、そこから更に彼女は「お母さん!」と目を大きく見開き飛び起きた。

恵は部屋の天井をベッドから身を乗り出す様にして見た。空間はもう無かった。

「今のは、やっぱり夢……だったの?

 でもそれは違うと言う事に彼女は直に気付いた。身の回りにはあの空間の匂いがほんの少しだが漂い残されている。

「違うわ。あれは夢じゃない……」

 思考へ心の目の焦点を当てた。

「でも、どうして? どうして、みんな居なくなっちゃうの?

酷い頭痛が襲い来たかの様に思わずこめかみに両手を当てては目蓋をきつく閉じ俯いた。もう自分は一生このまま一人で凍え死ぬんだわ。誰も助けてくれない。運命? 何の為? どうせ最後に苦しむのはあたしだけじゃない。怒りの後から来る悲しみに満ちた思いが心底から込上げた。途端、たまらず号泣した。

少し時間が経過してからだろうか? ふと、自身の手に目をやった。恵は祈る様に重ねた両手を胸元に当てた。彼女の両手には今もまだはっきりと母の温もりが確かに残っていた。

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日記帳 @新年早々、筆を滑らせています。

@新年早々、筆を滑らせています。

あけましておめでとうございます。平成最後の正月を迎えましたね。昭和から平成へ変わるときは正月に昭和天皇が倒れましてね。新年早々、テレビ番組が全て中止になって、皇居の何橋というんでしたかな? 有名な橋なんですけれども。三日間ばかり全チャンネルでその橋の映像だけ流れて、当時13歳だったかな? 何ともつまらない正月だなと思っておりましたが、今考えてみると相当失礼でしたね。苦笑 それでね、小渕さんがまだ閣僚の時代ですよ。首相時代ではないんですね。「平成」の元号をテレビで発表したんです。それが卒業アルバムに写真付きで載っておりましてね。まあ、アルバムは消えてなくなっているんですけども。苦笑 今年は誰が発表するんでしょうね? 歴史に残る写真になるので担当に当たる方は近い将来、総理大臣になりますよ。要注目です。あっけなく安倍さんが担当するかもわかりませんけれども。苦笑

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無料小説 処女作品@「愛するということ」第五章 =32=

――“神よ、あなたは死んだ者の為に奇跡を行われるでしょうか?

亡き人の魂は起き上がって貴方を褒め称えるでしょうか?

貴方の慈しみは墓の中に、貴方の誠は滅びの中に、宣べ伝えられるでしょうか?

貴方の奇跡は暗闇に、貴方の儀は忘れの国に知られるでしょうか? “

彼女は言葉を発した。

「しかし主よ、私は貴方に呼ばわります。明日にわが祈りを貴方の御前に捧げます」

恵は涙を止めた。それは悲しみの分、また一つ精神が通常よりも速い速度で何年分も先へと到達した瞬間であった。その時だった。

幾つかの人影がコチラへ向かって歩いて来るのが見えた。誰だろう? 恵は思った。人影はどんどん先ほどよりも此方へ近づいてくる。やがては一体誰なのか容易分かるほどその人影が此方まで歩み着たとき、恵は人物が健二だと分かった。瞬間、彼女の顔が強張った。

「よう、久しぶりだな」

「久しぶり? 何時も礼拝とか何処かで会ってるじゃない」

正樹と智彦は彼に陥れられたと話は聞いている。それなのに図々しくも友達のように自分へ声をかけた健二に対して恵は奥底から腹が立った。恵は堪える事無く言った。

「それに、あたしは貴方と話なんかした記憶なんてこれっぽっちも無いし。本当、自分で図々しいと思わないの?

「チッ!

 健二はどうやら言い返す言葉を失った様だった。

「何か用?

 恵が冷たい眼差しで発した。

「いや、別にお前に話があってわざわざ来た訳じゃない。たまたまさ。何時も向こうのタンク裏で煙草吹かしてるからな。まあ――」

こちらからもう一つ丘へ上がった体育館の奥はちょっとした森林となっており、その入り口となる場所付近にこの施設の飲料用としているコンクリートで出来た大きな貯水槽が二つ並んである。そう言えば過去に蛇口から出た水がとても生臭い異臭を放ち不意に水を飲んだ者はたちまちに腹痛と下痢をすると言う事件が起きた。職員と専門業者が調べた所、原因はその貯水タンクに猫の死体が投げ込まれていた事からだった。犯人はまだ見つかっていない。あれから二つの貯水タンクの蓋はチェーンと南京錠で頑丈に締められ固定された。恵は、あの事件は恐らく健二の仕業だったんだと、この時霊的なものから感付いた。

「本当に貴方って最低な人ね」

 健二の話などろくに聞く事無く恵は口に出してそう言った。

「最低? おい、今の話しに最低な話しなんかあったか?

「貴方の話なんか知らないわ。猫殺してタンクに入れたのは貴方でしょ?

「おいおい、いつの話だよ。こいつ可愛い顔して頭おかしいんじゃないのか?

 側にいる仲間達に顔を向けて健二は言った。

「やったのは貴方よ。そんな酷い事して楽しいの?

「ああ、楽しいさ。快感だね」

 健二はまるで面白半分に話を合わせる様にしてそう言った。

「野良猫に残飯あげてる時に、棒で殴り殺すんだ。楽しいぞ」

急に恐ろしい形相となりそう発した健二を見た瞬間、恵の全身に鳥肌が立った。

「おかしな人。貴方どうかしてるわ」

恵はそう言ってから荘へ戻ろうとベンチから立ち上がり歩こうとした。その時だった。「おっと、ちょっと待った」と、健二がそれを阻んだ。「どいて」恵は言ったが、彼は彼女の言う事をとても聞き入れてくれそうには無かった。

「正樹は逃げたぞ。またお前を見捨ててさ。まあ、結局こんなもんだろ?

「正樹の話はしないで」

恵の言葉を無視し健二は話を続けた。

「恋愛? 此処でそんな物求めるほうが可笑しい。馬鹿げてる。あいつもそれにやっと気付いたんだろ? まあ、俺が奴でも同じ様に逃げただろうよ」

「何が言いたいの?

「結局は自分一人生きる事だけで精一杯なんだって事さ。まあ、お前だって同じだろ?

「違う!

 恵は思わず声を荒くしてそう発した。

「違う? おいおい、本音はそうじゃないだろ?

「正樹が逃げたのは全部貴方のせいでしょ! 貴方がそうさせた。それなのに最低ね」

 恵は毅然とした態度で言った。

「まあいいさ。何とでも言えばいい。まあ、でもとりあえず智彦が死んだ事で、裕美も随分気が楽になってるだろうよ。病院の中でな」

 言って、健二はにやけて見せた。

「貴方には人の心が無いの? 本当に最低以下だわ」

健二は「フン」と小癪な態度をとってから、再び話しをし始めた。

「そう言えば、あいつが自分から階段を転げ落ちて死ぬ前、おかしな事を言っていたな。俺のもう一つはもう無いって、いや、俺のもう一つはここで終わっている……だったかな? 訳の分からない事抜かしやがるからあいつの肩強く押してやったよ」

 言われて恵は一瞬唖然とした。がしかし、我に返った恵は思考を巡らせてから言った。

「貴方が……智彦は事故じゃなくて貴方が殺したの?

「自分からって言ったろ? 智彦が死んだのは、俺のせいじゃない」

「黙って! 貴方が智彦を殺したんじゃない!

恵は許せない気持ちで心の中が一杯になった。

「貴方が……貴方が階段で智彦の肩を押して無ければ、彼は死んでなかった」

恵の睨み付けた目から涙が溢れ出した。

「酷い。でも、どうして? どうしてなの?

健二の話から、智彦は階段で事故に遭う事を知っていた様に恵は感じていた。また、彼はもう一つある健二の運命までをも見ている。智彦は自身の運命を変える事が出来た。しかし、彼はあたかも神と約束を交わしたかの様に、強い意思で流れるままに何もしなかった。人生には裏表が向かい合って存在している。二つは決して互いの影をなくし一つになる事は無い。彼は何かを見、そして変えてはいけないと悟った。それは一体何の為? 一体誰の為に彼は運命を何一つ崩す事無く死を迎えたというのか?

「彼は見た……もう一つの現実を……」

 正樹の話したとおり、智彦は未来を見ている。恵は正樹の声が聞こえた後に出した言葉を、小さく独り言にこの時も呟いた。

 恵は我に返って健二に問いかけた。

「貴方の目的は何なの? どうして酷い事ばかりするの?

「雑草があるだろ?

「え?

「この辺にあっちこっち生えてる雑草さ。みっともなくて誰からも良く見られない。刈られても刈られてもまた同じ醜い葉が伸びる。綺麗な花なんか一生咲かなければ、変わる事もできない。雑草は雑草のまま一生終わるんだ」

健二は溜息を漏らすように溢した。そして言った。

「此処に居る俺達はな、みんな雑草なんだよ」

「施設の皆は雑草? 違う! 貴方は全部間違ってる。どうかしてるわ」

「おいおい、お前は違うと思っていたのか? それとも正樹たちと一緒に違う草にでもなれると思ったか? それならとんだ夢物語だ。忘れるな、俺達は皆捨てられて此処に居るんだ。世間から見れば俺達は人間じゃない。野良犬と同じ扱いさ。可哀想だとエサを与えられて何とか生きてるだけ。家族の愛も無ければ、外にある世間体の教養もない。良き未来への始まり? 誰かが言ってたけど、そんな物、俺達にはない。良き未来なんてある訳が無いだろ。もう最初から人生なんて終わってるんだからな」

「話にならない。貴方は馬鹿よ。どいて、もう帰る」

 しかし、誰一人として彼女から退こうとはしなかった。

「お願い、此処を通して」

 言って、恵は押し通ろうとした。しかし阻止され言われた。

「そう急ぐな。まだ話は終わっちゃ居ない」

「まだ雑草の話でもするつもり? うんざりだわ」

恵は健二を睨み付けた。

「そうさ、雑草の話さ。とにかく俺達は皆、雑草として生きるしかない。見下されて馬鹿にされない様に棘なんかも生やしてな。なのに、お前らはそれを分かろうともしないで、忘れていた」

「忘れてた? 忘れてる事なんか何も無いわ」

 恵に言われて、健二は首を横に何度も振った。それから言った。

「此処に人並みの平和があって、それがそのまま続くと思ったか?

「信じて祈れば終わらない。恵は正樹と――」

「これ以上聞きたくない!

 健二が遮り大きな声で言い返した。恵は一瞬たじろいだ。彼は続けた。

「どれだけ祈ろうと信じようと平和なんて来ないさ。誰にもな。だからお前らだけ幸せってのは、此処では誰も認めないし許されない」

健二が周りに目をやった。そして「おい」と、合図をやった。恵は健二の仲間に両腕を捕まれた。持っていた着替えの体育着やタオルは取り上げられそこら辺に投げ捨てられた。

「何? ちょっと、何よ」

 恵は一瞬頭が真っ白になった。そして、まさか――と、そう察した時、「ちょっと、離して!」嫌!」命一杯に暴れて両腕を解こうとした。が、力及ばず、とても解く事など出来ない。健二はかまわず話を続けた。

「どんだけ叫んでも、もうお前は誰にも助けてもらえない。先生に言いつけて里親にでも出るか? まあ、女のお前が行けばただの島流しさ。俺の姉貴と同じ事になるだけだ」

健二が急に悔しさを滲ませた表情で涙を浮かばせた。

「俺は何回も見たんだ。まあ大した話しじゃないさ。只、世の中は不公平。下の人間は良い様に利用されるだけ。そして誰もその事に目をくれやしない。だから同じ事が繰り返される。ずっと犯されるんだ。俺の姉貴はな、取り上げられたんだ。壊されて盗まれた。それでも盗られた幸せは、そいつらを幸福にも裕福にもさせる。過ちが間違いじゃないんだ。なんでも不公平の下許されるのさ。俺の姉貴は生贄と同じで、欲求で飢えた人間の為に犠牲にされたんだ。悪い人間の為に良い人間が滅ぶ。おかしな話だろ? でも、それが答えなのさ。外では奴らみたいに吐き気のする成金の馬鹿笑いのネタに、俺達は一生良い様に利用される。本当の脳みそ空っぽの馬鹿に、弱みを握られてコケにされるんだ。そして無理やりにも力任せに取り上げられる……幸せをな。本当に与えられた不公平は毒だ。少なくとも此処ではな。もう沢山なんだよ。俺はもううんざりだし見たくないんだ。分かるだろ? 最初から最後まで此処では皆同じで良いのさ」

「可哀想な人。本当に可哀想な人」

 哀れむと言うよりも責める口調で恵はそう言った。健二は思わず叫んだ。

「煩い! 黙れ!

恵は再びと健二を睨み付けては冷静に言った。

「貴方は全てを知る神じゃない。それに、不公平は貴方がそう思ってるだけ。出来事には必ず理由があるし、もっと他に考えるべき事は沢山あると思う。恨んでばかりじゃ、何時までも不公平のままだわ」

「黙れって言っただろうが!

 健二の平手打ちにより恵の頬が赤く膨れ上がった。

「只、マセただけのお前に何が分かる?

「別にマセてなんかない。貴方が何も知らないだけよ」

健二が今度は思い切りに平手打ちをした。恵は余りの痛さに涙を滲ませた。

「雑草がはみ出して並びが悪いのを見つけた時、どうするか分かるか?

「知らないわ。お願いだから、もう帰して!

 恵は再びと藻掻いた。しかし解けない。健二は恵から見て恐怖を感じるほどに形相を変貌させた。そして言った。

「並びが悪けりゃ、引っこ抜いたり根っこから刈るのと同じでな、皆でそいつを引き摺り下ろして、もうはみ出した事が出来なくなる位に破壊して教えてやるんだよ!

 次の瞬間、健二が恵の着けているシャツのボタンを上から引っ張って千切る様に強引と剥ぎ、彼女の前方を露出させた。

「嫌! やめて! 誰か、誰か助けて!

恵はありったけの声で叫んだ。しかし、辺りには健二らグループ以外に誰も居なかった。もはや絶望だった。健二は、白いブラジャーのストライプを無理やりに肩からずらし、全体を下へと押し下げた。途端、想像していたよりも綺麗でとても成長した乳房が露出した。彼の股間に小さからぬ快感の波が押し寄せて来る。

「嫌――!

 両腕を健二の仲間らにがっしりと捕まれた状態から恵が叫んだ。

「足が邪魔だ。足も捕め! 横に倒すんだ。そうだ、よし、下も脱がせろ」

恵はスカートを捲り上げられた状態から下着を脱がされた。彼女は勿論抵抗した。しかし恵の反抗も空しく、その後、彼女は強引無理やりに秘部を健二に愛撫され、健二から順番に性的暴行を長時間受けた。

「真っ先に恨むんなら、逃げた正樹を恨め」

「許さない……絶対に許さないから!

しかし、恵の憎しみに満ちた声は誰の耳にも届く事はなかった。

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日記帳 @謹賀新年

@謹賀新年

謹んで新年のお祝辞を申し上げます

旧年中はひとかたならぬご厚情を賜り、

誠にありがとうございました。

本年も相変わらず、

よろしくお願いいたします。

皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

ありがとうございます。

滝川寛之

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