無料小説 処女作品@「愛するということ」第五章 =37=

実と恵美と恵の三人は、今、鳩居灯台の方へと足を運んでいた。砂利から赤土がむき出しとなった道へと辿る途中、恵は考えていた。 正樹――彼はまるで自分の運命を確認するかの如く、突然と現れては消えた。それは一体何を意味し、そして彼の身に何があったと言うのか。

「――恵、恵ちゃん」

 恵はハッと気が付いた。

「どうしたの? 何か考え事ね? もう着いたよ」

「あ!

 恵が俯き加減から前を向くと、すぐ目の前に白い灯台が聳えているのが分かった。恵は立ち止まったその場所から、その灯台の天辺を見上げた。高さは十五メートルほどだろうか? 幅は直径で五メートルはあるであろうその大きな灯台が、その存在をどっしりとコチラにも見せ付けている。

「近くで見ると大きい――」

「島の周り全体から見える灯台だからね。あそこに展望台があるから、そこでちょっと休憩してからウートートーしようね」

「うん。此処って展望台もあったんだね」

「此処から観る海の景色は最高よ。恵ちゃんもびっくりするはず」

 恵美がにこやかに言った。三人は灯台のもっと奥にある展望台がある場所へと更に進んだ。

「うわー! 綺麗――」

 展望台へと来た瞬間に、恵は思わずそう発した。

「今日も透き通ってるね。本当に、この島の海は青くて綺麗さ」

「ヤンヤ(※そうだな)」

「本当、綺麗……。こんな景色見れるなんて。本当に生きてて良かった」

恵が喜ぶ顔を見た実は、彼女の側で満足そうな顔をした。

「おじさんもね、たまに此処に着てこの景色見てたら、本当に此処で生きてて良かったと思うよ。昔から海以外は何にも無いところだけどね」

「其処が良いんだよ。昔のまま何も変わらない事って素敵だと思う」

「そうだね。年だけはどうにもならないけど、良いものがずっとあるって良い事だからね」

三人は、しばらくの間広く澄んだ海を只じっと眺めた。

「それじゃ、行こうか」

 実が言った後、三人は展望台から灯台の方へと戻った。そして、灯台の裏の方へと回り込んだ所にある、獣道のような林の中へと続く小道へと入った。更に奥へと小道を歩いて行き止りとなった場所に、大きなガジュマルの木が支配している域がある。樹木の横の方には、本当に小さな墓が見えた。

「ここだよ」小さな墓の前に止まって実は言った。

恵の目は驚きの色を隠せなかった。まさか、これほどまでに寂しい場所に、健二の姉が眠っているとは思わなかったのだ。実が恵のその思いを察して言った。

「中田君たちは身寄りが居なくてね。可哀想だけど、魂のある此処に埋葬されたわけさ」

恵は供花に目を向けた。

「花、新しい……。今日誰か来てたのかな?

 恵は恵美にさりげなく訊いた。

「今も本当に此処で寂しい思いをしているからね。少しでも癒される様にってさ、島の皆で、交代でね、供え物用意して何時も来ている訳。だからね、此処の墓の花は枯れる事が無くて、何時も新しいわけさ」

「島の人達って、本当にみんな優しいんだね」

 恵の言葉に、実と恵美は微笑んだ。

「それじゃ、ウートートーしようね」

 恵美は供え物を徐に袋から取り出し、それを墓の前に置いてから線香に火を付けた。焚かれた線香から漂う香りの中、屈んだ三人は静かに深く目を閉じ、そして両手を合わせ、心の中で祈りを唱えた。祈りを終えて目を見開いてからも、少しばかりしんとした時が経った。実から口を開いた。

「それじゃ、そろそろ帰ろうか」

実は立ち上がった。それに合わせて恵美も立ち上がろうとした。その時だった。

「ちょっと待って――」

恵は緊張した趣で、屈んだ状態のまま、辺りを見渡した。

「今、聞えたの。人の声が、聞こえた……」

恵は言った。

「嘘? 本当にね?」隣に屈み直した恵美が訊いた。

「恵ちゃん、なんて聞えたの?

「ごめんねって……、ごめんねって聞えた」

緊張した趣で恵は言った。

「まさか!――

実と恵美にも緊張が走った。

「でも違う。正樹じゃない……。女の人の声だった……。恵美おばさん、恵、怖い……」

恵はそこまで言うと、硬直し、身震いだした。

「デージナッテル。マジムンの声やさ。エー、ヘークナーケーラ! マヤサリンドー!

(※大変な事になった。幽霊の声だ。おい、早く帰ろう! 霊にとりつかれるぞ! )

「ヤッサーヤ。(※そうだね)恵ちゃん、立てるね? もう早く帰ろうね」

恵は震える足を抑えるようにして立ち上がった。そして、三人は足早に家へと帰った。恵はこの日の夜、悪い夢を見て魘された。熱も少しばかり出ている様だった。

「ごめんね……、ごめんね……」

この言葉がずっと繰り返される空間の中に、今、恵は居る。熱のせいだろうか? 声だけしか見えない世界が、朦朧とした様に恵は感じながらも、その薄れ行くような意識の中で、懸命に彼女は誰かへ訊いた。

「貴女は、もしかして、小百合さん、ですか?

「嗚呼、なんて事してしまったの……。何も出来ないまま死んじゃうだなんて……。私が何も言わなかったせいで、もう一人犠牲者が出てしまうんだわ……。ごめんね……、ごめんね……」

「え? どういう事、ですか? もう、一人? 教えてください。誰が、犠牲に、なるんですか?

「傷よ、傷があるわ」

 そう小百合の声が言った後だった。

「――小百合をやったのはこの俺さ」

 突然、聞き覚えの無い男の低い声が、向こうから響いて聞えた。恵は声の先へと目をやった。と同時に、自分は今、上半身を服からむき出しにした状態だと言う事に気が付いた。薄気味の悪い顔をした男が、断片的に、どんどんコチラへと近付いてくる――。恵は咄嗟に、著しく育った両胸を隠した。男が目の前まで来た。

「――あいつは本当に物分りが良かった」

 とても低く響いた声は、恵の体中に響き、心底から震えさせた。彼女は逃げようと体を動かした。動かなかった。

「腕を退かせ!

 男の手が恵の両腕を掴み、力ずくで胸を露出させようとした。

「嫌!

 恵は大声で叫んだ。と同時に、彼女はいきなりとこの空間で意識を失った。

恵はハッとした様子で目覚めた。

「夢、だったんだ……。良かった」

たった今起こった出来事が夢であった事に、恵は心底ほっとした。しかし、彼女の腕には、男に掴まれた感触が、何故か残っていた。

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