連載小説 愛するということ 第二章 4

「ねえ、お姉ちゃん」
 恵が銀色のフォークをくるくると空中へ描くように遊ばせながら発した。
「何? あっ! ちょっとまって。今、良い所だから」
 姉の知子はゆっくりと食事をしながらテレビに見入っている。今、最も人気のバラエティー番組が始まっていた。
「今日、お姉ちゃんも見たんでしょ?」
 この言葉を聞いた瞬間、知子が全身を硬直させたのを恵は悟った。
「何が?」
 知子は何食わぬ素振りで恵の目をチラリと見つめ、視線をテレビに戻す。
「だ、か、らぁ、兵隊さん」
 知子の素振りを注意深く伺いながら恵は話した。
「あの人さ、何処から来たのかな?」
「知らない。私は見てないから。気のせいじゃないの? 多分、芝刈りのおじさんよ。ほら、あのおじさんも兵隊さんみたいな格好してるでしょ? 多分そうだよ」
 知子はその場しのぎでそう話したが、恵は嘘を付いている事を完全に察した。
「お姉ちゃんの隣にくっ付いて一緒に読書してたのに?」
知子は再び硬直した。震えた手で持っていたフォークを皿の上に置く。
「お姉ちゃん。隠しても駄目だよぉ。恵、チャッピーと一緒に見たんだから」
「だから違うってば! もうこの話はしないで。いい加減にしないと怒るわよ」
知子は十一歳になった頃、ガマの話しや霊的現象を恵に内緒で密かに聞かされていた。そして万一、日本兵を見た場合は絶対に目を合わしてはいけないと言う事を注意されていた。この類の怨霊と話をした場合、普通の人間ならば即座に魂を抜き取られ呪が移る。但し、怨霊などという何か特殊で異様な物体は十二歳以上の人間でないと興味を示さないらしい。知子はこのとき既に思春期を迎えていた。十四歳だった。

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