無料小説 アマチュア時代作品 @川辺にて(18)

「もう、隆史のせいで昼食の時間が遅れそうよ。もっと急いで切って!

「はい、はい。分かりましたよ。まったくさ、料理なんか作ったこと無いのに、いきなり包丁なんか使えるわけ無いじゃないかよ。舞は少し厳しすぎるよ」

「文句言わないの。ぶつ切りなんだから簡単でしょ? 誰にでも出来るわ」

今日の昼食のメニューはカレーライスだった。舞は十時半頃から支度をしたかったのだが、隆史のおかげでそれが十一時頃となってしまっていた。美味いこと仕込むには時間が掛かる料理だ。舞は正直焦っていた。

「痛!

隆史がとうとう包丁で人差し指を切ってしまった。鮮血がしたたり落ちる。

「もう、ドジなんだから!

言うと、舞は料理器具などが置かれている箇所にある籠の中から絆創膏を取り出しては隆史の元に寄った。そして、すかさず隆史の切れた人差し指を手に取り、それを口の中に含んでは鮮血を舌で拭った。それから絆創膏を巻きつけ応急処置は完了した。隆史は一連の行動にキュンと心を打たれたのだった。

「はい、これで大丈夫よ。隆史はもう良いわ。鍋を混ぜる役をやってて」

髪の毛を巻き上げて項を見せる舞の綺麗な後ろ姿は、男性の本能をくすぶる物があった。

「ふう、やっと完成したわね。こんな事なら昨日から仕込みを入れとくんだったわ」

舞がくたびれたように呟く。

「役に立てなくて御免よ」

隆史が申し訳なさそうに言った。

「良いの。ギリギリ間に合ったし、気にしないで」

言って舞は微笑んだ。それが隆史には愛おしく思えた。

「それじゃ、器に入れて食卓に運びましょ。あっ! 隆史はまたドジ踏みそうだからテイク達を呼んできて。運ぶのは私一人でやるわ」

「なんだよ! 信用されてないなぁ、俺」

隆史は思わずぼやいた。

「躓いて食事を溢す可能性があるもの。隆史ならきっと……ウフフ♪」

「チェッ! はいはい、分かりましたよ。それじゃ、師匠達を呼んでくる」

「やけに素直ね。ウフフ♪」

「なんせ舞の尻に敷かれてるからな、俺。あはは!

諦め良く隆史は笑った。

「ウフフ♪ 分かってるじゃない。それじゃ後で会いましょ」

「うん、それじゃ行ってくるよ」

隆史が決まりよく言う。

「はい、行ってらっしゃい」

舞は優しくそう返した。

此処で一旦二人は別れた。

隆史は少し急ぎ足にテイクらの元へと向かった。

「師匠にテルおじさんとセベアおじさん、昼ご飯の準備できましたよ」

隆史が扉を開いて元気よく言った。

「なぬ? 姫様ではなく隆史が呼びに来おったわい」

テルが言う。

「もうそんな時間か。もう少し揉んでやろうかと思っておったのに」

「もうこれ以上はご勘弁じゃ!まったく、難題ばかり出しおってからに」

セベアがテイクにそう愚痴った。

「隆史よ、昼食の準備でも手伝っておったのか?

テイクが訊いた。

「はい、師匠。こき使われてました。あはは!

「フォーフォフォフォ! 仲つづましいのう。ところで、料理は上手くできたのかの?

「それなんだけど、指切っちゃったよ。テルおじさん」

「フォーフォフォフォ! そうか、そうか」

「指は大丈夫なのか?

テイクが心配そうに訊いた。

「はい、舞が指を舐めてくれて、絆創膏で傷口塞いだから直ぐ血が止まりました」

「なんと、姫様が傷を負った指を舐めたのか!?

「はい。あの……それがどうかしましたか?

「いや、何でもない……」

「好かれておる証拠じゃ。フォーフォフォフォ! 隆史よ、おぬしもやるのう」

セベアがそう言って茶化した。隆史は素直に照れた。

「昼食はカレーライスですよ。師匠」

隆史は話を逸らすためにテイクへそう言った。

「肉はたんまりと入っておるだろうな?

「はい。一杯入ってます」

「うむ、それならば楽しみじゃ。どれ、食卓に向かうとしよう」

「ふう、やっと解放されるわい」

テルとセベアが口を揃えて言った。

「昼食が終わったら、一休みしてからブリッジデッキに集合じゃ。あっ、隆史は来んでも良いぞ」

実際、隆史がブリッジデッキに来たところで何の役にも立たないのだが、それでもテイクはテイクなりに隆史へ気を遣ったつもりだった。

「夕刻頃には町が見えてくるはずじゃからのう……。うむ、承知したぞよ」

テルはそう言うと士気を上げた。

「夕方かぁ~、楽しみだなぁ」

隆史は異国の町並みを想像しては胸を大きく膨らませた。

「うむ、実に楽しみじゃ……。さて、急ぐぞ隆史。食事が冷めてはせっかくのご馳走が台無しになる」

言って、テイクは先に部屋を後にした。皆もテイクに習ってぞろぞろと並んで食卓へと向かった。

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