無料小説 アマチュア時代作品 @川辺にて(9)

この日の昼はコックリの木の実ではなく、舞自慢の野菜パスタが食事として出された。

「ウフフ♪ 大盛りで分量計ったから沢山食べてね」

「あさりとか植物以外の物も食べるんだね、妖精って」

「人間の様に、毒がなければ何でも食べるわよ。只、捕る量が違うわね。私たちは自分達に必要な分だけを捕るの。商売のために捕ったりはしないわ。勿論、妖精にも商人や狩人、漁師達は居るけれど、その数は国で厳重に決められていてごくわずかだし、量も定められていて自然界を壊すほど捕れないようになってるの」

「そっか……」

「でも、それならステーキが食べられると思ってる」

隆史の心を見た舞が言った。

「そんなこと思って……るけど、出ないんだろ?

昨夜の話を思い出し、隆史は返した。

「出るわよ、今夜。肉はテイクの大好物なの」

言われて、隆史はテイクの強靱な肉体を頭に思い浮かべた。

「そうだろね。あの人、凄い体してるし納得かも」

言って、隆史は思わず身震いした。

「でも、本当に食事はコックリの木の実だけだと思ってたでしょ? あれは冗談だったのよ。隆史の困った顔が見てみたくて。ウフフ♪」

楽しげに舞は言った。

「なんでい! やっぱり舞にはゴリゴリの刑だな!

言うと、隆史は昨夜と同じく舞の頭を掴みに出た。

舞はそれを巧みにかわしながら

「ウフフ♪ 狭い厨房で暴れちゃ駄目よ。もう、それなら隆史の食事だけはコックリの木の実だけね」

 と、ぴしゃりとした態度で言った。すると隆史は追うのを止めてから、崩れたようにして泣きべそ気味に「ご勘弁を~!」と返すのだった。

それが可笑しかったのか、そこから舞は大声で「あはは!」と笑った。隆史もつられて「あはは!」と笑ってから「もう、姫様にはかなわないや!」とぼやいた。

「これで“私の尻に敷かれるだけ”って言葉の意味が分かったでしょ?

「うん、分かった気がするよ」

「でも私の事が好き。そうなのね?

「うん。隠し事できないから言うけどさ。だって一目惚れだもん! 当たり前だよ」

「ウフフ♪ どうしようかな~?

舞が考える素振りを見せた。

「え!? もしかして、付き合ってくれるの?

「なしょ。ウフフ♪」

「自分ばっか内緒はズルだぞ! やっぱり舞にはゴリゴリの刑だ! 待て~!

二人は厨房から抜け出し甲板の方で追いかけっこをした。

「姫様、昼食はまだですかな?

駆付けたテイクが言った。

「出来てるわよ。ちょっと待ってて、今、食卓に持ってくるわ」

「それならワシがしましょう。お忙しいようで」

言うなり、テイクは隆史を睨み付けた。

隆史は一瞬で凍りついた。追いかけっこが止んだ。

「それならお願いするわ」

隆史の心境を読みながら舞は言った。

「それから……おい、小僧。姫様に余り乱暴はいかんぞ! 分かっておるな?

「はいっ!

ぴしゃりと垂直に立って隆史は答えた。

「もう、テイクったら……ただの遊びでしょ? 何故そんなに怒るの?

「ワシは姫様の事を思って言っているに過ぎませぬ」

「それなら隆史を怖がらせないで」

「う~む」

“分からない”とばかりにテイクは唸った。

「さ、食事にしましょう。行こう、隆史」

「う、うん」

「大丈夫よ、私が居るからにはテイクには手を出させないわ。約束」

テイクに聞えぬ様、小声で舞は言った。隆史は正直、助けられたと感じていた。

舞の作った野菜パスタは、匂いの期待を裏切らず、それはとてもとても美味しかった。その余りの美味しさに、隆史やテイク、セベアにテルは何度もおかわりをするのだった。

「いやはや、姫様の手料理はいつ食べても美味じゃ」

「まったくじゃな。これでは召使い共の面子は丸つぶれじゃ。フォフォフォ!

「そんなことないわ。全部彼女たちから教わった料理ですもの」

「しかし、料理の出来る女性が居るだけで助かりますじゃ。姫様にはご無礼かと思いますがな。なあ? テイクよ」

「全く同意見だわい。みんな食事の作れぬ男ばかりだからの。しかも華があって良い」

「旅に出るといったのは私よ。色んな所で責任を持たなきゃ……だからみんな気にしないで。舵取りも出来ない分、みんなには毎日ご馳走するわ」

「フォフォフォ! これは楽しみだわい! なあ? 小僧よ」

「うん。俺、一粒残さずいっぱい食べるよ!

「当然じゃ! 貴様、姫様が直々に作る料理を残したら遠慮なく殺して見せようぞ。分かっておるな?

「テイク、止めて!

「はて、また姫様のお出番かの?

ひそひそとセベアはテルに呟いた。

「ねえ、みんな聞いて。隆史の事を小僧って呼ぶのはやめにして欲しいの。それとも、名前で呼ぶのには抵抗があるかしら?

舞は王女として三人に訊いた。

「姫様、何をおっしゃる! 人間の小僧ですぞ。小僧は小僧で良いではないですか!

「ワシは姫様に同感じゃ」

セベアが言う。

「ワシもじゃ」

テルも同じように言った。

「くぬ~! 二人とも、裏切りおったな!

悔しさを露にしてテイクは言った。

「人間と言っても姫様が認めた小僧じゃ。名前で呼ぶくらい何ともないわい。なあ?

セベアがテルに訊く。

「そうじゃ、そうじゃ。貴様は如何せんすぐに熱くなるでかなわんわい」

「貴様らに言われとうないわい。何時も喧嘩ばかりしおってるくせに……まあ良いじゃろう。姫様が認めて、かつ、妖精が見える少年じゃ。ここは一つ引いてみるとしよう」

「それじゃ決まりね。みんな、今からは隆史って呼ぶのよ。隆史、良かったね」

隆史の方へと顔を向けた舞は満面の笑みを浮かべた。

「う、うん……」

今までのやりとりから怖々としながらも隆史はそう答えた。

「これでみんな徐々にだけど、隆史と仲良くできるはずよ。隆史も遠慮なく今からは“セベア、テル、テイク”って呼んで良いわよ」

言って舞はまた微笑んだ。

「でも悪いから“さん”付けで呼ぶ事にするよ」

頭をかきながら隆史は言った。

「わっはは! 実に謙虚で良い少年じゃ。少しだけ気に入ったぞ」

テイクがテーブルが揺れるほど声を大にして言葉を発した。

「セベアさん、テルさん、テイクさん。これから宜しくお願いします!

席から立ち上がった隆史はそう言うと一礼した。

「フォーフォフォフォ! 良い少年じゃ。良い少年じゃ」

テルとセベアは同調して言った。

「良かった。これで一つ問題は解決ね。ウフフ♪」

「あはは、何だかみんなに認めてもらえたみたいで嬉しいよ」

「これからはもっと楽しく過ごしましょうね、隆史」

「うん!

それからは、何となくぎこちなかった食事の時間が、やんわりと和やかになったのだった。隆史はテルとセベア、テイクについて何の妖精なのかを訊いた。テルとセベアはツル科の植物の精で、テイクは意外にも雑草群の妖精だという事が分かった。

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