散文詩 @「新しい必然」

「新しい必然」

金色の太陽が丘から登った。

只、ゆらゆらと遠近感を利かした大きな光は、

その先々で生命の目覚めを見ている。

朝が来た。

それに矛盾した答えなど一つもなかった。

眩しい陽光と対面したようにある海原は、

上空の千切れ雲とともに、

夜風を払しょくしていた。

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無料小説 処女作品@「愛するということ」第五章 =31=

愛すると言う事~第五章

「もういい、さよなら」

あの時、恵の本音は全く別にあった。彼女は正樹に呼び止めて欲しかった。恵は何度も振り返ろうとした。しかし、彼女の運命がそれを拒んだ。

“あなたがたは、以前はやみであったが、今は主にあって光となっている。

光の子らしく歩きなさい――

光はあらゆる善意と正義と真実との実を結ばせるものである――

主に喜ばれるものがなんであるかを、わきまえ知りなさい。

実を結ばないやみのわざに加わらないで、むしろ、それを指摘してやりなさい。

彼らが隠れて行っていることは、口にするだけでも恥ずかしい事である。

しかし、光にさらされる時、すべてのものは、明らかになる。

明らかにされたものは皆、光になるのである。“

次の日の日曜。この日の礼拝は一人で参加した。裕美は智彦の死によるショックから精神状態が極度に不安定となり、やむなく専門の病院へと入院していた。賛美歌が礼拝堂中に響き渡る時、恵は何気に周囲を見渡した。居ない――。彼が何処にも見当たらない。彼女は落胆した。恵は昨日から待っていた。正樹が会いに来るのを待っていた。夜になった。しかし、彼はとうとう彼女の元へは来なかった。

明けた月曜日。

学校を終え、何時ものようにバレーの練習へと施設内の体育館へ向かって恵は一人歩いていた。と、その時、突然誰も居ないはずの場所から男の声が聞こえた。

「恵――」

恵は足を止めた。声の聞こえた場所へと顔を横に向け。此処は丁度、大きな階段へと伸びる細い歩道の中間付近で、横に向い日陰となる奥にはベンチがある。そう、恵と正樹が会話を交わしたあの辺りだ。声が聞こえたのはそのベンチの方からだった。今の声は、正樹! そうよ、彼の声だわ。

「正樹……正樹なの?

恵は胸の内から来る高鳴りを抑えつつ、ベンチへと近づき辺りに目をやった。が、しかし、彼の姿は見えない。

「正樹、何処なの?

「恵……。どうして――」

「え? 恵は此処だよ。お願い、姿を見せて」

「どうして智彦と……」

「智彦と?

恵は再び辺りを注意深く見渡した。やはり誰も居ない。彼女は頭上を見上げて言った。正樹、もう一つの世界からなの? しかし、言葉は返ってこなかった。声は聞こえなくなった。

恵は空遠くを見つめる様な眼差しをしたままその場に立ち竦んだ。彼女は今霧のかかった幻想の中へと思考が飛ばされている。お母さん。今のは空耳だったの? 違う、そうじゃない。これはきっと、とても近い場所にある時間の狭間から届いた声だわ。でも、それなら見えるはずよ。そうね、確かに光が見えなかったのは可笑しいわ。もしかしたら声は同じ世界の物で時間と場所がずれて響いた物、それとも此処に声が届いた瞬間辺りにさ迷っていたものが何処かへ戻ったのかもしれない恵の中で姉と母の魂が会話を交わしているかの様に、思考は巡らされた。

「彼はとうとう見たのよ……もう一つの現実を」

最後の言葉だけが恵の今の記憶に強く残された。もう一つの現実……正樹、何があったの? 彼は今頃何処で何をしているのだろうか? 只一つ言える事は、彼の身に何かが起きた。一体、どうして――

恵はこの日の練習に集中できず力が入らなかった。練習終える頃、何時ものように辺りは日没にて薄暗くなり始めていた。解散し荘へと向かう途中、もういちど恵はテニスコート近くのベンチへ寄った。彼女はベンチに腰掛けた。

この時にはすっかり日は完全に暮れていたが、辺りに点々とある夜間灯のおかげでこの場所は暗闇を免れていた。彼女は一つ深い溜息をこぼしてから夜空を眺めた。それから今日起きたあの出来事を振り返る――。もう一つの現実とは何なのか恵には分からない。でも、一つ言えることは、彼はもうここには居ないという事――。恵は心の何処かで察した。正樹は今、遠い別の場所にいて、もう此処へは二度と戻って来ない。でも、最後にある答えはきっと違う。これで終わりになんかならない。恵も正樹の事ずっと好きだから。恵の瞳から思わず涙がこぼれた。だから何時かきっと、正樹にまた逢える。彼女は只々彼の無事を願った。その思いが体の中で急激に熱く大きくなった時、今すぐ彼に会いたいと強く感じた。恵はやがて号泣した。正樹と出来事全てを思い出し、一人泣いた。色々な事があった。しかし、それらはまだ運命のスパイラルにおけるほんのわずかな出来事の一つに過ぎない。この先またどんな事が想像も出来ない二重螺旋の闇の中に潜んでいるのだろう――。恵は心の中で言った。

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