散文詩 @「そういうことだから」

「そういうことだから」

悲しいことがあると、

声かけるひとがいれば、

その人は幸せ者だね。

それとおなじで、

光を灯してくれるひとがいると、

その人は救われの身だ。

だから声を出して泣きなさい。

何故に人は自然と泣き叫ぶのか。

そういうことだからだよ。

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無料小説 処女作品@「愛するということ」第四章 =29=

さよならと言われたあの夜、これまで出会った様々な愛の全てを失った。彼は恵への裏切りに対して心底に悔やんだ。彼女が正樹に残された最後の愛だった。正樹は心の中でこの先の運命を祈るように見つめた。しかし、まっすぐ伸びていたこの運命とも言える道の先は、完全と途切れてる様に感じられた。辺りを見渡すと、光が新たなる道へと細く繋がれている人生の分岐点だ。もう、どうにもならない。ここで正樹は、再び施設から逃走する決意をした。

正樹は前回と同様に、昼食をとった後から行動に出た。日曜の朝食の定番である主食の菓子パンは、その時食さず古汚いリュックの中へしまい込んである。

リュックを背負い荘を後にした正樹は、何食わぬ顔で裏門を抜けて外へ出た。まず向かう先は、智彦の消えたあの場所だ正樹はそう心に決めていた。彼はこの目でもう一度見ておきたかった。智彦が消えた場所そう。そこで、もしかしたら向こうの世界へ行けるかも知れない。あいつに会い、もっと、もっと、飽きるほどにまで語り合おう。勿論、恵にも会いたい。きっと向こうなら大丈夫。彼女は許してくれるさ。その前に、向こうではこんな事になんかなっていない筈だ。智彦の言うとおり、もう一つの世界は、此処とはまるで違うはず――正樹はまっすぐに向こうを見つめ歩き続けた。頭の中は今、未来の希望だけを見つめている。彼はわき目をらさずまっすぐに歩いた。

道中、智彦と上った長い坂道へ差掛る。その途中にあるあの公園で、あの時と同じ様に正樹は冷たい水を飲んだ。座り込む隣には智彦が居るような感覚がした。空は夕焼け色に染まっている。正樹は小汚いリュックザックから今朝の朝食として出されていた渦巻菓子パンを取り出し、空腹をゆっくりと癒すように味を噛み締めながら食べた。

智彦と一緒に居た時と同じ様に、黄昏から正樹は再び歩き始めた。もう少しだ、もう少しであそこに着く――何度も心にそう言い聞かせながら、彼は夜の道を一人歩き続けいよいよ智彦が消えたあの場所へと辿り着いた。正樹の鼓動高鳴った。

この夜は私道への入り口となる場所から蛍の光がポツリポツリとだが、辺りで見えていた。少し進んだ左側には、深い森の中へと続いて居るであろうもう一つの私道がある。前はこの道は無かった様に感じたが、それはどうやら見過ごしだったのだろうと正樹は思った。

あの時と同じ様に、此処から先へはとても暗く、流石に気味悪く感じられた。しかし、私道の終わり辺りへと来た時、智彦と訪れた前とは違い、其処はどこからか明るい光が砂利道側へと漏れていて、それにより気味悪さが大分和らいでいた。正樹は何気に光の出ている方向へと視線を向けてみた。彼は思わず目を大きく見開いた。

なんとこの道路に漏れた光の正体は、前に来た時には無かった空き家からの明かりではないか。しかし、一見して分かる位に、その光は明らかに普通とはまるで違っていた。そこだけに異なる何か特別な光が周囲に広がりを見せ、半球形にその先が薄く此方側と区別され途切れた様に見える。まるで其処にだけ違う世界があるかの様にだ。正樹はその光の境界線を抜けて、忍び入る様に門から庭の方へと足を進めた。家の中をベランダ窓から少し離れた位置からそっと覗いてみた。

瞬間、正樹の全身に鳥肌が立った。視線のその先にある家中には、智彦と両親の姿がはっきりと見える。どう言う事なんだ? 何で智彦が……。まさか智彦がコチラに気付いた。あっ、正樹! と、家中から大きく通った声がこちらへ届く。

「智彦――」

 反射的に正樹が小さく声を返した。

「正樹君じゃないか。こんな夜遅くにどうしたんだね?

 この時初めて会った智彦の父親が、網戸を開けてからそう発した。

「あ、あの、こんばんは……」

ふと正樹が家中の奥の方へと目をやると声に気づいた智彦の母親がキッチンの方からコチラへ向かって来るのが見えた。

「いきなり外に居るからびっくりしたよ」

 智彦が言った。母親が直後ろから声をかけてきた。

「まあ、汗で酷く汚れてるじゃない。正樹君、今日はまだ家に帰ってないの?

「あ、はい。あ、あの、此処に寄ってから帰ろうと思って……」

 正樹は思わず口にした。

「へえ、そうなの。智彦、あなたまさか正樹君に何かしたんじゃないでしょうね?

「してないよ! 俺と正樹は一番の友達――」

「いえ、違うんです! あ、あの、その……家が」

 智彦と母親が言い争いになりそうな気がしたので、正樹は止めに入るつもりで適当にそう誤魔化した。

「家? 正樹君。家の方で何かあったのかな?

 智彦の父親が言った。

「い、いや、何も……」

正樹は先ほどから頭が混乱しており、正直これ以上に返す言葉を上手く探す余裕など無かった。智彦の父親はたまらずに話した。

「正樹君。君達家族もこの辺に越して、まだ少しほどしか経っていないから色々大変だろう。ましてや正樹君の場合、二年の途中からの転校で、中々周囲に馴染めなくてイライラしていると思うが、君の両親にも色々と事情があるんだ。それに智彦の居るクラスのみんなは、君に優しくしてくれていると聞いている。此処でまた新しく色々とね、とにかくそろそろ学校の同級生とも早く馴染んで、向こうと同じ様に青春を楽しめば良い。それに、向こうの友達にだってもう会えない訳じゃない。何時だって会える。友達を失ったと思っていたら大間違いだよ。君は特別に普通の人以上に友達が増えてるんだ。だから何も落ち込んで両親にあたる事なんか無い。そうだろ?

智彦の父親は、正樹がどうやってここに居るのかを当然知るはずがない。多分、親子喧嘩でもして此処に来たのだろうと智彦の父はこの時勘違いしていた。

「もう良いじゃない。ほら、お父さんが変な話しするから正樹君が困ってる。ねえ?

 智彦の母は優しい笑顔で正樹の顔を伺察したように言った。

「正樹君、夕飯まだでしょ?

「あ、はい……」

「此処で食べていくと良いわ。すぐ用意するからちょっと待っててね」

「あ、ありがとうございます」

「電話使うと良い。君の両親に連絡しておきなさい」

 言って智彦の父親は玄関へ案内した。下駄箱の上にある白い電話機を目の前にして正樹は思った。やっぱりそうだ。思った通り、智彦が消えたこの場所は……正樹は間違いなくここは向こうとこちらの世界を結んでいる場所なんだと確信した。自分は願ったとおりもう一つの世界へこうして来れた。只、向こうと此処は智彦の言っていた通り世界がまるで違う。引越し? 何の事だろう……。智彦の両親は自分の事を知っている。と言う事はこの世界では自分もこの辺りに住んでいると言う事か? 家族? 此処では、自分の両親も生きているのか? 正樹は心の中で話の一つ一つを整理した。

「正樹、それ良い腕時計だな。ちょっと見せてくれよ」

 正樹が電話番号を分からずおどおどとしている様子を見かねて、智彦が逸らすように言った。智彦は続けた。

「とりあえず電話は後にして中に入れよ」

「それじゃそうしなさい」

 智彦の父親に言われて正樹は居間へと連れて行かれる羽目になった。もはやこの状況から逃げ出すことは出来ない。正樹が居間に座った。その時だった。

「ところで智彦の言うとおり本当に良い時計だね。何処で買ったのかな?

「え? あ、これは智彦から……いや、あの、向こうの友達から貰った物です」

「ああ、引っ越す前に向こうの友達から貰ったやつね。凄く良い時計だな。何でいつも付けてなかったんだ? でも良いよな。俺が最近人から貰った物と言えばこれだけで、後は――」

 言われてその物を見た瞬間だった。正樹は驚愕した。

「智彦。お前、それ……」

「え? ああ、これか? 恵から貰った奴だよ。昨日話ししなかったけ?

 智彦はそう発してから正樹の耳元に口を近づけた。囁く様に続けた。

「昨日恵に告白して付き合った時、貰ったって言っただろ? 正樹、一昨日はありがとな。全部正樹のおかげだよ」

正樹はこの赤いバンダナに見覚えがあった。確か恵と付き合い始めた頃に彼女から貰った物と全く同じものだ。いや、間違いなく智彦が今手にしているそれは自分が恵から貰ったはずの物だと彼は気付いた。

正樹は思わず後ろポケットを探った。ポケットからバンダナが消えている嘘だろ? 正樹がそう思ったその時だった。

「御免下さい――」

 玄関のチャイムと共にコチラへ声が届いてきた。

「ハイ、今行きます」

 智彦の母がキッチンから玄関先へと向かっていく。

「あら、奥さん」

「こんばんは、夜分遅くにすみません。あの、こちらにうちの息子が――」

女性の声が正樹たちの座る居間の方まで届いた。その女性の声はどこか懐かしく聞き覚えのある声だった。正樹は気付いた。この声は……そうだ、自分の母親の声だ――! 正樹は驚愕しながらそう察し、飛び上がる様にして立ち上がった。が、しかしその瞬間、彼の頭を重い目眩が急に襲って来た。正樹はたまらずその場で膝をついた。遂には、完全と倒れてしまった。

「おい、正樹。どうしたんだ? 大丈夫か?

「正樹君。おい、しっかりしなさい」

朦朧とする意識の中、正樹は耐えられず目を閉じた。そして「うぅ……」と、思わず重い唸り声を上げてから、意識をしっかりさせようと再びゆっくり瞼を開いたその時、彼は辺りが真っ白で何も無い世界を目の当りにした。その後、この白い世界が徐々に黒色へと塗り潰されて行くのが見える。やがて周囲は、互いが交じり合った灰色から暗闇と化した。正樹は周囲を見渡した。が、しかし、何一つ見えない。この真っ暗な空間は、重力を感じさせぬほどに軽い――。目で確認する事は出来ないが、とにかく今、正樹自身は宙に浮かんでいる様な気がした。

「誰か、誰か居ませんか?

 正樹はそう言葉を発したつもりで居たが、向こう側にあるであろう壁に弾かれ、コチラへと何重となり戻ってくるだけだった。

「嗚呼……」

 正樹は思わず絶望に満ちた声をあげた。

「正樹君――」

 後方辺りから急に、聞き覚えのある声が正樹の耳に届いた。この声は……、まさか――! 彼は思わず後方を振り返った。園長先生の声だった。

振り返り見た先に園長先生の姿は見えない。しかし、代わりとして、何やら小さな穴がその向こう側に開いているのが分かった。穴は次第に、光を大きく周囲へと放って行った

「あっ――!

 瞬間、とてつもなく眩しい光が正樹の目を襲った。途端に彼は、先ほど見つけたあの小さな穴へと一気に吸い込まれて行った。正樹は、はっとした様に目を覚ました。彼は元の世界へと戻っていた。

「ここは……元の世界か?

自分は幻覚を見たのか? 正樹は少し気が動転した。辺りをもう一度見渡す。やはりさっきまでの光景は何処にも見当たらなかった。あれは、幻じゃない……。あれがもう一つある現実の世界……きっとそうだ。でも、どうして……どうして、またここに戻されたんだ? 正樹は光について再度振り返るように、これまでの事を思い出した。

光を初めて見たのは、弟が死んだ頃……それからテニスコート側にある恵と座った木陰にあるベンチで……あっ――!

そうだ。確かにそう言えば、光に恵が出たあの日、彼女がこんな事を話していた。

「――世界はDNA細胞のように並行して螺旋状に進む二つの世界があるの。そして、その間にある二つを支える道から互いの人生を行き来できる道がある……人生の分かれ道もそれよ。でも、それはそのまま跳ね返されたり、すり抜ける様にすぐ向こうの世界を通り越して元の世界へ戻されることもあるわ――」

この時初めて恵の話の意味を理解できた正樹は、深いため息をつき下を向いた。

――やっぱり恵の言ってた通り、二つは一つにはならないのか……。でも、あの時、絶対に二つは一つになったはず。それなのに、どうして……

「どうして此処の世界なんだよ!

 正樹は思わず、どうにもならない苛立ちを地面へ叩きつけるかのように、顔を下へと向けたまま叫んだ

少し気持ちが落ち着いた頃、正樹の全身から疲れがどっと沸いてきた。彼は仰向けで横になった。もう一度あの日の事を思い出

 恵はあの時、姉が消える前に言った言葉も正樹に話していた。

「生きてそして幸せになるの。これから本当に死ぬほど辛い事があっても、そこに隠された答えの意味が分かるまで――」

「俺も恵と同じ様に、ここで答えを見つけなきゃいけないのか……」

正樹は仰向けに寝そべったままそう呟いた後、極度の疲労から何時の間にか眠りへついていた。眠りの途中、正樹は現実と区別が付かない夢を見た。それはとても信じられない出来事だった。

「智彦……。どうしてお前が恵と――」

「違うんだ! 神様……お願いだから訊いてくれ! 違うんだよ――」

「何でこんな暗い所に、ずっと閉じ込められなきゃいけないんだ?

「寒くて死にそうだ。誰か出してくれ!

「お願いだ。もう一つの世界でも何でも良い。だから戻してくれ! お願いだから――」

「嫌だ、まだ行きたくない。恵と智彦に……ちょっと待て。や、やめろ……やめてくれ!

うわっ! と夢の中で叫び声をあげた瞬間、飛び起きる様にして正樹は目を覚ます

「なんだ、夢か……」

額に残る汗を服の袖で拭いながら、辺りが明るくなり始めているのを正樹は確認した。正樹が次に行く先は決まっていた。彼は目を擦った後、空腹だけを寝かせたままに自分の生まれた町へと歩き出した。砂利道の私道が公道へと繋がる時、正樹は後ろを振り返り、智彦の居た空き家のある方向を眺めた。もう空き家は此処からは見えない。しかし正樹は、その方向へと思い切りに手を振って見せた。

――また会える。きっと、また会える。

彼はこの時、そう確信していた。

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