日記帳 @文学賞落選から今日まで。

@文学賞落選から今日まで。

あの日から今日までまったくと言ってよいほど筆が進まなかったけれども、落ち込んでばかりもいられないし、愛する女性たちにアンケートで甘えてばかりもいられない。ぼちぼち意識集中して頑張るかな。というかもう年末なんですけどね。正月は休み返上で頑張ろうか。

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散文詩 @「わだかまりが嘘のよう」

「わだかまりが嘘のよう

わだかまりが嘘のように晴れた今朝は、

なんだか、君との新しい朝を思い出す。

激しくもみだらに、

濃厚に絡みついた裸体から噴き出す汗をそのままにして、

絶頂を迎えた丑三つ時。

そう、確かにあの時も、

手足は震えたものだった。

快晴とは無縁のように思われた人生だった。

だからこそ、空の青さに感動を覚えたね。

霜に濡れた雨音が、

トタン屋根の表面を毎日たたいていた。

それでも、

生きている限り、

自然と前へ進む。

たくましく生きた半生。

残りの半分は楽しませてもらうよ。

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無料小説 処女作品@「愛するということ」第四章 =27=

畑道の様な砂利道の入り口辺りから街灯は完全と途絶え始めている。目先はとても暗く、二人の目がその暗闇に慣れるまでには少し時間が掛かった。私道となるこの一本道のずっと先に、黄緑色に光る小さな蛍光色が無数に見えてきた。蛍の群れだ。小さく燈された曲線を描き交差させる沢山の光によって、真っ暗闇はこの場からなんとか免れた。何処にあるかは定かではないが、かすかに川の音がこちらまで伝わって来ている。明るく、しかしどこか寂しさを感じる蛍の群の出迎えを受けながら、もう少し先へと二人は私道を進んだ時、大分慣れた目が、ぽつんとある一つの廃墟らしき建物を見つけた。門の前辺りへと辿り着いた時、二人はその場に立ち竦み、少しばかり口を閉ざしたまま目の前にある光のない廃墟を眺めた。

「ここが俺の生まれた家だよ」

 智彦が言った。

「誰も居ないみたいだけど、どっか出かけてまだ帰ってきてないのか?

 明らかに廃墟だと心の何処かで気付きながらも、しかしそれでも此処に生活の温もりが感じられない事に対して信じられないと言わんばかりに正樹は訊いた。

「……正樹、御免。実は言うとな、俺、分かってたんだ」

「え? 分かってたって、どう言う事だよ?

 正樹は訊いた。

智彦は俯き答えようとしない。正樹はその心境から察した。

「まだ分からないだろ? もう少し待ってれば誰か帰ってくるさ。そんな、いきなりすぐあきらめるなよ。大丈夫だって」

 言って、正樹は智彦の肩に手をやった。

「違うんだ。聞いてくれ」

 とっさに智彦が首を横に振りながら言った。智彦は続けた。

「帰ってきたのは俺だけで、他にはもう誰も帰ってこない。分かってたんだよ、誰も居ないって。でも、もしかしたら生きていると思ってた。でも、やっぱり死んでるんだな」

正樹はこの時初めて彼の両親もこの世に居ない事を知った。智彦からそんな話を今まで聞いていなかったのだ。正樹は驚きの表情を浮かべた。

「最近な、見たんだ。もう一つの世界。ほら、光の話しをお前がしてただろ? あれに近い夢みたいな変な現象」

 智彦は意味深げに言った。

「智彦、お前も光を見たのか? ちょっと待て、もう一つの世界って……もしかして」   

 言って、正樹は恵の言葉を思い出した。

“「ねえ、正樹。来世とか、あと、何て言えばいいんだろうもう一つある光の世界、そお言うのって信じる?」“彼女は確かにそう言っていた。

「まさか本当に、あの光にはそんな物まで隠されているのか?

智彦は正樹の呟きに構わず話を続けた。

「それでな、俺、もしかしたらここにある世界は夢で、もう一つが現実なんじゃないかって思ったんだ。だから、俺の親が死んだのも全部夢の世界の話で、本当は生きてると思ったんだ……」

正樹はたまらず訊いた。

「お前の見たもう一つの世界では、生きていたのか?

「分からない。でも俺の運命は、此処とは間違いなく違う物だったよ。だから多分、俺のお父さんとお母さんも違ってたと思う。いや、違ってなきゃおかしいんだ」

智彦はここで再び俯いた。そして一つ涙をこぼした後、天を仰いだ。

「俺が正樹と始めてあった時あるだろ? 俺が入園した時。あの日のちょっと前にな、俺のお父さんとお母さん事故で死んだんだ。ここに来ればもう一つの世界に戻れると思った。夢から覚めると思ったんだ。やっぱりあれは夢だったんだって」

 智彦はそれ以上言葉を発する事が出来ず、この上ないほどに顔をくしゃくしゃにして崩れる様に泣いた。正樹はたまらず彼を慰めるように強く抱き締めた。

「正樹。実は言うとな、もう一つだけお前に話してない事があるんだ」

ようやく少しばかり感情を抑えた智彦が、再び正樹から離れて話し始めた。

「実はな、今居る俺はこの場所に居てここに居ない。今日の昼、迎えが来たみたいなんだ。ちょっとした手違いで転げ落ちて……。恨んでもしょうがないな。とにかく、裕美と会う前から俺はこの世に本当は居ない。意味、分かるだろ?

最初、智彦が何を言いたいのか正樹にはさっぱり分からなかった。

――裕美と会う前にこの世に居ない?

あっ――! 正樹は、耳障りに遠くから煩く聞えたあの救急車の存在を思い出した。

そんな、まさか――? しかし、智彦の口調には真実味があった。嫌でも察するしかなかった。正樹はここで彼の話す内容がようやく理解できた。あの階段で転げ落ち倒れたのは智彦だった。彼はその時、自身の物体が二つに分かれた。つまり、正樹がたった今抱き締めた智彦は霊体であり、もう一つの現実にある物体はここではなく病院にあるのだ。

「どうしても今日見ておきたかったんだ。お前と一緒にここに来たかった。何時だって俺達は一緒……だろ?

「ああ、当たり前だろ」

 言って、正樹はまた智彦を抱きしめた。正樹の目からも涙が溢れ出してきた。今抱き締めている智彦は、もはやこの世の者ではない。それを辛く悲しくも正樹は悟っていた。智彦はとにかく正樹と共に何時までも生きて居たかった。二人は互いに友情をいつも感じていた。この先他では出会う事が恐らく無いであろう、本当で一番の親友だった。それなのに、神は逃がす事無く試練を与え続ける。一体、これに何の意味があるというのだろうか? 何故に悲しみの答えばかりを神は与え続けるのか?

これまでの悲しみとこれから襲い来る運命に、もはや二人は涙を抑える事が出来なくなっていた。

「智彦。大丈夫……俺はお前を絶対に忘れない。だから何時までも一緒だ」

「分かった……」

 智彦はそう言うと正樹を自分の体から離し、身に付けていた腕時計を外して正樹に差し出した。この腕時計は智彦が父親から貰った大事な宝物だった。

「これを持っていて欲しい……。俺はいつでもお前を見守っている。俺もお前の事忘れない」

正樹は手にした腕時計を左手首に付けた。瞬間だった。智彦の体に異変が起きた。光が彼を迎えに来たのだ。どんどん正樹の目の前から智彦の姿が無くなって行く――。正樹はたまらず力の限り泣きながらも彼の名前を叫んだ。

「智彦! 智彦――!

正樹の声が暗闇の向こうまで響き、そこから風が此方へ向けて吹いて来た。辺りの草木が揺らぎ、無数の蛍が光へと向かって一斉に舞う。智彦の体がやがて大きな光となり辺りまでも明るく照らした。瞬間、智彦の頭上へと集まっていた無数の蛍の光が二重螺旋を描くようにしながら天へ向け何処までも舞い上がって行った。智彦は完全と消えた。

「嗚呼……」

 正樹は声をもらしながら空を見上げた。

 足の両膝をついた。正樹は見えない神へと向かって言った。

「どうして……どうして何時もそうなんだ! 神様、何で何時も俺たちは不幸ばかり与えられるんだ? なにがキリストだ! 幸せなんか全然不公平で、弱い人間はいつも苦しめられてばかりじゃないか! 運命? 理由? 意味? そんなモノの為にいつまでも痛めつけられて泣いてなきゃいけないのか? 神様、お願いです、教えてください。お願いです……もう嫌なんです……。もう嫌なんだよ!

正樹は両腕で顔を隠す様にして蹲っては、額を土へと俯かせ号泣した。智彦の姿が完全とこの場から消えた時、彼は搬送先の病院で息を引き取った。智彦は健二と同じ荘だった。それだけに一番辛かったのは紛れもなく彼の方だったに違いない。正樹は智彦の自身へ対する気遣いと余裕な態度でそれを忘れていた。浮ばれないはずの智彦の表情が最後に安らかに見えたのは、確かに正樹へ見せた最後の優しさだったのかもしれない。友を心から思いやる気持ちと言う感情をまた一つ彼に教えられた。正樹は大粒の涙を流しながら彼との思い出を振り返った。いや、体内より目の前へと放出された光の映像がそれを見せた。出会いからこれまでの記録へと記憶が早送りに蘇る突然、速度が急激に落ち、止まった。これは――? 正樹は思わず心の中で呟いた。それは紛れもなく集団リンチのあった最後の晩、智彦が共同浴室へと向かった先に起きた現象を鮮明に捉えた場面だった。智彦がこの時まで決して明かす事がなかった出来事が、何故か自身にはないはずの記憶の中から不思議と映し出されている。正樹は最初、それが一体どう言う事なのか全く検討が付かなかった。

――まさか、未来の自分がこの時を見たとでも言うのか?

正樹は大分後になった時、そう考えていた。映像は緩やかに再生された――智彦はあの晩、暗闇に輝く光の中で全てを見ていた。只、正樹の映し出した映像では、その内容を確かめる事が残念ながら出来なかった。彼は何か写真を手にして一人呟いていた。

「正樹、お前だったのか……」

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