書評 @神津凛子「スイートマイホーム」

=小説家で詩人の滝川寛之による書評シリーズ=

書評 @神津凛子「スイートマイホーム」

本当ならば、この作品の書評を記するのは間違っているのかもしれない。私は何を知りたいのだろうか? この作品を読んだところで何を感じるのだろう? 実に様々な思いが交錯した。己に困惑した。

 私は第十三回小説現代長編新人賞を一次で落ちた。何故にどうしてなのか、よりによって一次で落とされてしまったのだ。じつはいうと、神津凛子「スイートマイホーム」は、その回の最優秀受賞作品なのである。

 選評の評価はよし。レビュアーの評価もよし。作者の美貌もすばらしい。こんな完璧なことが本当にあるのだろうか? 私は皮肉れているな。己に叱咤した。

 兎にも角にも読んでみなければ評価できない。私は受け取った最終ゲラの専用ファイルを恐る恐る開いた。もう後には引けない。万事は尽きてしまった。そうではなかった。

 瞬間、冒頭から溢れ出てくる筆力の強さに圧巻される。くそっ! 負けてたまるか! と、もがきにもがき苦しみ、一回目は流し読みでなんとか残りを読破した。

 少し休憩をはさみつつ二回目に入る。すると、なんということでしょう! 見えてきた見えてきた♪ その見えてきたことについては実際に手に取り読んでからのお楽しみということで内緒にしておきます。苦笑

 三回目。最終章を熟読する。巷で言われている”この作品はホラーだ!”というのは真っ赤なでたらめで、本当のところは”ホラーではなくて立派なサスペンス”だなと痛感。やはり他の書評はあてにならないものである。まあ、噂とはそんなものなのであるわけだ。

 トータル評価として定めてみようか。

 筆力=△(冒頭の筆力の強さは素晴らしい)

 ストーリー=◯(二重丸にしなかったのは伸びしろがあると言う意味で)

 まあ新人なので、良い評価のほうだと思う。私は本当のところ辛口なのだから。

 余談になるけれども、私が応募したのは以下の二作品である。熟読されたし。

 少年探偵団(https://amzn.to/2Blt7Xp

 原付バイクと風景画(https://amzn.to/2BlgXOf

 読めばわかりますけども、一次で落とされるような代物ではないのですよ。困ったなぁ。圧力と工作。文学界から出禁を食らっていることと併せて本当に参ってしまいます。

 さいごに、神津凛子さん。本当に表情が美しい人でして、よほど男性陣からモテるだろうなと。素晴らしい遺伝子なのだから、子孫繁栄願っています。それから「スイートマイホーム」についての追記として、サスペンスにしては、道中、物足らなさを感じたのは否めない。もう少しプロットが欲しかったかなとおもう。あと、この小説はシリーズ化できるので、(今回は長野県の物件だったけれども、日本中には他にも事故物件が存在するということで、シリーズ化できるということ)ぜひ、頑張ってみてください。こんかいは、第十三回小説現代長編新人賞の最優秀受賞本当におめでとうございます。文壇にていつか会えることを願っていますよ。

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書評 @大沢在昌「帰去来」は壮大なSFサスペンス

=小説家で詩人の滝川寛之による書評シリーズ=

書評 @大沢在昌「帰去来」は壮大なSFサスペンス

 大沢在昌さんと言えば、私個人的には「流れ星の冬(https://amzn.to/2QBxnw8)」なのだけれども、その他、大沢さんの著書には、ハズレが全く見当たらない。全てが大傑作の塊なのである。この辺が。さすが直木賞作家だな。と感じずにはいられないと言ったところであるのだけれども、元はと言えば、今回の「帰去来」という作品の主人公である女性警視(もう一つの世界では警部補でもある)と言った構成ではなくて、彼の得意なジャンルは”ハードボイルド”であると確信しているのだが、それを今回の作品で見事に覆されたと言った感じ。”もはや、あっぱれ!” その一言に尽きる。

 当作品「帰去来」の冒頭は、詳しく述べられないのだが、主人公である女性警部補(刑事)のおとり捜査から入る。小雨のちらつく光景の描写が見事で唸るのだが、それだけではない。実に巧妙でシンプルに物語を組み立てているといった具合なのだ。それから彼(大沢在昌さん)の持ち味である筆力のある文体。もうそれだけで読みはじめから世界へ誘われてしまう。酔いしれてしまう。

 しかしながら、この冒頭を裏切るようにして、東野圭吾さんばりのサスペンスが一風異なったものへと変貌してゆく。それが装丁にも記されているとおりの、”タイムパドックス”と”パラレルワールド”の融合体なのだ。手前味噌なのだけれども、私はそれをちょうど十年前(2008年)に執筆したことがあって、「愛するということ(https://amzn.to/2BrlG0T)」という処女作品なのだが、この手の作品は執筆に時間を要する。おそらく大沢在昌さんも相当苦労して脱稿したに違いない。そう思うと、”お疲れ様です。” と、一言添えて上げたくなる。

 それから主人公の女性警部補(刑事)が”タイムパドックス”と”パラレルワールド”の融合体にて異なる世界へと誘われると、そこは違う日本社会であったと言うのが味噌でもある。日本は太平洋戦争を敗戦後、民主主義ではなく、共産主義へとなり、地方分権さながらの連邦国となっていた。と言うのが、自然と読者へ飲み込ませる仕組みになっている。これに関しても見事だと感じた。

 勿論、土台はサスペンスであるからして、実に様々な仕掛けが施されていることは言うまでもないことなのだけれども、主人公である女性警部補(刑事)の父親と、冒頭に登場するこの世に存在しないはずの殺人鬼が、今後どのようにして再登場するのか? どう密接に絡んでくるのか? 私はそこを注視して読んだ。

 作品が良作なのか愚作なのかといった話は大沢在昌さんに失礼であると思う。彼の作品群に間違いはないのだから。私個人的には三回読んで良さが分かった「流れ星の冬(https://amzn.to/2QBxnw8)」ではなくて、最初から面白く読める、感じる、当作品を推したい。「帰去来」は大変すばらしい作品である。この作品へ費やした九年の構想は、伊達ではないなと読めばすぐにわかるはずだ。悟るはずだ。何故なら、全てが完璧なのだから。私は当作品を読んで自信を無くしてしまっただとかそんなことはなく、まだまだ自分の可能性に伸びしろがあるな。と、やる気がわいたのは言うまでもない。

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書評 @小路幸也さんの「テレビ探偵」は”ポップンロールステーション”

=小説家で詩人の滝川寛之による書評シリーズ=

書評 @小路幸也さんの「テレビ探偵」は”ポップンロールステーション”

 ”やられたっ!” これが私の第一声としてあった。そして、ちょうどあの頃のことを思い出す。そう、若かった少年時代のあのころのことを。昭和の名番組を、気持ちよく思い出すのだ。

「八時だよっ! 全員集合――!」

 いかりや長介がはっぱをかけたようにして舞台中央でそう号令をかけたとたんに流れるオープニング曲は、私たち少年探偵団をたまらなく笑顔にしてくれた。じゃんじゃんじゃんじゃんじゃじゃじゃーん♪ じゃっじゃかじゃじゃじゃじゃじゃん♪ それから最後に呟くのである。

「”次行ってみようっ――!”」

 この小説は五つの大カテゴリ(大プロット)で構成されており、それから十二人の主要キャラクターがおりなしてゆく一人称の群像劇(もしくは仮想的な回想録)である。文脈は、たとえて言うならば、FM沖縄の看板番組だった”ポップンロールステイション”といえばよいのか、そう話すると余計に分からなくなる可能性も否めないので「王道のエンターティメント小説」というとズバリである。私はこの小説を読んで、著者の文壇デビュー作も読んでみたくなった。それはつまりいうところの、本物の作家だと私が認めた証拠でもある。

 実はいうと、私は花村萬月さんつながりで小路幸也さんのツイッターを訪問したことがあって、アドレスは”https://twitter.com/shojiyukiyaなのだけれども、そこのコメントで失礼なことを発言したことがある。「私のところの土産物と北海道の土産物を物々交換しませんか?」たしかそのようなやりとりだったとおもう。やり取りというよりも相手にされなかったのだけれども。苦笑 それで、彼のブログ記事なんかも読んだことがあって、日記の書き方なんかについて勉強したことがある。小路幸也さんの文体は流暢で他人が真似できない個性的なセンスがあるものだから、本当に読みやすくてグッドなのだよね。それがこの小説にも色濃く表れていた。

 ”やられたっ!” というのは、私もこの類の小説を書く予定で居たので、それについて先を越されてしまったなと。消沈まではしていないものの、プロットの練り直しを図られそうではあるわけだ。

 余談になるかもしれないが、今回受け取った小路幸也さんの著書「テレビ探偵」との出会いに感謝したいとおもう。今年の年末25日頃に本屋へ並ぶということで、改めて校了後の作品を購入し読ませていただく思う。それ位に良作だった。エンターティメントは何ぞや?! それを原稿へ力強く叩きこんだような力作であった。

 小説とはいいものだね。世界を見るだけではなくて、色々なものを引き寄せてくれる物だから面白い。小説にもいろいろな表情がある。骨格がある。世界がある。貴方も私の書評をきっかけに読書をしてみませんか? きっとではなくて、ぜったいに楽しいはずだよ。まずは、小路幸也さんの「テレビ探偵」から始めてみようよ。ぜひに。

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日記帳 @とある出版社業界関係社から書評のオファーがきた。

@とある出版社業界関係社から書評のオファーがきた。

まずはプロフェッショナル読者として書評をしてみないか? というダイレクトメールを頂いて、一応、わたしにも自身の業務の事もあるし、中々多忙なのだけれども、熟考した結果、引き受けることにした。まずは小路幸也さんのゲラから拝見しようと思う。この企画は販売前の作品を書評すると言うもので、中々楽しみなところなのだが、ネタバレしないよう気をつけつつ、許される限り面白さを伝えられたらよいかなと思っている。

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