無料小説 処女作品@「愛するということ」最終章 =50=

智彦と恵に出会ってから最初の日曜日。正樹は智彦の部屋に午前中居た。二人は最初からお互いに好意的だった為、直ぐに仲良くなれた。勿論、恵も同じだった。恵と智彦は初日こそ正樹に対して互いに何となくぎくしゃくとしたが、二日目の朝からはそうではなくなっていた。三人はある場所で待ち合わせをして一緒に登校していた。帰りも三人一緒だった。恵と智彦のおかげで学校への近道やその他の地理も分かった。この辺りは公園が多く存在していて、その中の一つが学校への近道として利用されていた。展望台からは西海岸が遠くに望める。そんな公園だった。この日の日曜日の午前中は、ゲームを楽しんだり話をしたりで智彦と正樹は盛り上がった。正樹は昼ご飯をご馳走になった後、智彦に恵の家へ行ってみようと持ちかけられた。午前中は宗教的なことをしており会うことは出来ないが、午後からなら彼女に会えると言うことだった。勿論、正樹は承知した。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」最終章 =50=” の続きを読む

無料小説 処女作品@「愛するということ」最終章 =49=

愛すると言う事~最終章

朝の六時を過ぎた頃、二階の部屋で正樹は目を覚ました。もう一つと言える此方の世界の自分との一体化は記憶と共に無事完了した。開いた窓から辺りに残された夜風が部屋の中へと入り込んだ。どうやら此処の自分は中学二年で、そしてまた、とある町に越して来たばかりだと言う事が、この世界の正樹の記憶から分かった。今日から新しい学校に通う事になっている。新たなる青春時代の始まりに正樹は心を浮き立たせた。七時になった。正樹の母親である靖子が部屋の扉を開けてきた。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」最終章 =49=” の続きを読む

無料小説 処女作品@「愛するということ」第八章 =48=

正樹はハッとして目を覚ました。どうやら今見ていたものは夢だったようだ。それにしても酷い悪夢だった。彼は思った。正樹は今、どこか分からない場所で仰向けに横となり天井を見ている状態だった。彼はこの横になった状態に対して、何やら違和感を覚えた。それは場所がどうとか言うことではなく、自身の体がまるで宙に浮いているかの様にふわりとして感じたからだ。服は寝間着のような衣類にいつの間にか変わっている。正樹は自分の背中より下から様々な機器の音や人の声、そしてまた、消毒液の様な余り嗅いだ記憶が無い匂いがする事にふと気が付いた。正樹は思わず寝返る様にして下を確認した。彼が目を向けた其処には、何と、危篤状態である自分の姿があった。正樹は驚愕した。正樹は脳挫傷で意識不明の重体だった。現段階では生存確率は極めて低く、たとえ奇跡的に意識を回復させたとしても、後遺症によって社会復帰までには大分時間が掛かるという話を、駆け付けた佐代子達は聞いていた。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」第八章 =48=” の続きを読む

無料小説 処女作品@「愛するということ」第八章 =47=

 その世界はまるで違っていた。場所は下校時の夕方だった。向こう側から伸びてきている公園の中にある道を、高校生のカップルがこちらへと向かって歩いてきた。ここは公園の高台に位置する場所で、丘の下に町並みと西海岸が一望できる。正樹の直目の前には、塗料でウッドに見せかけた固いコンクリートのベンチがあった。制服姿の二人は、向こうから歩いてくるなり、正樹の影を通り過ぎて其処に座った。正樹の体はまるで空気の様に、二人を何の抵抗もなくすり抜けさせた。周りには正樹と二人以外の人は見当たらない。正樹は、二人が自分の体をすり抜けた事実よりも、二人が智彦と恵である事に対して驚いた。二人はどうやら正樹の存在に気付いていない。座り込んでから話をしだしたのは、恵の方からだった。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」第八章 =47=” の続きを読む

無料小説 処女作品@「愛するということ」第八章 =46=

正樹は今、夢とも現実ともいえない世界の中に居た。それはとても暗く寒い空間。正樹は其処で、自分のこれまでの人生を見た。只、漂うような感覚が今、皮膚の表面全体から感じる。正樹は暗闇に限りなく近いこの空間に一つだけ灯された光の中を、今、静かに覗いていた。光は、彼自身の記録を全て配列し映し出した物体。それはまるで、螺旋を描くDNAの様に、一つ一つの記憶が下から上へ繋がり捩れて伸びていた。光によく目を凝らすと、その中には、これまでの自分の記憶には無い記録が潜んでいる事に正樹はふと気が付いた。が、しかし、それでも今の正樹は、無表情に只それを含めて眺めているだけだった。途中、魂であろう正樹自身の一部が小さく千切れ、そして、一つの光景の中へと消えた。直後、入り込んだ場所となる光景が、全体を描いて脳裏へと鮮明に浮かび上がった。正樹は瞳を閉じてその光景だけに集中した。 “無料小説 処女作品@「愛するということ」第八章 =46=” の続きを読む